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問答無用 帰国子女なまいき三姉妹 フランス書院文庫
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問答無用 帰国子女なまいき三姉妹 フランス書院文庫

御堂乱(著者)

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問答無用 帰国子女なまいき三姉妹 フランス書院文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 フランス書院
発売年月日 2018/10/25
JAN 9784829643303

問答無用 帰国子女なまいき三姉妹

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商品レビュー

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2021/06/17

ワンテーマの限界…。

2021年6月読了。(ネタバレ無し) 著者はデビュー時から「結城彩雨か、はたまた綺羅光の再来か?!」と、この世界では大いなる期待と称賛をもって現在に至るまで活躍されている作家である。 しかし数作品読んでいる内に、そのどちらでもない独自の作風を目指しているのだと感じた。...

2021年6月読了。(ネタバレ無し) 著者はデビュー時から「結城彩雨か、はたまた綺羅光の再来か?!」と、この世界では大いなる期待と称賛をもって現在に至るまで活躍されている作家である。 しかし数作品読んでいる内に、そのどちらでもない独自の作風を目指しているのだと感じた。もちろん、両大家にリスペクトは有るだろうが、同じことをしても意味が無いのは何処の業界でも同じことなので、当然と言えば当然。 前置きが長くなったが、著者の作品は正直久々だった。著者畢生の傑作『人妻肛虐授業参観』で、映画「ダイ・ハード」張りのアクション大作(大袈裟かw)を読んだ時には本当に驚いたが、今思えばあの当時から、その作風は固まりつつ有ったのかもしれない。 それは、「ある特殊且つ奇抜なアイデアや設定」を一つのテーマ(命題)として掲げ、それに基づいて作品を展開していく事にある。又、描写においては映像的な(映画的な)表現を好む傾向がある。 今作も、過去に何度か使っているテーマの一変形だと云えるだろう。 凡そ現実には起こり得ない事をそのテーマ(命題)にすることと、背景説明や心象描写的な文章はなるたけ控えて、動的な表現を多用することにより、登場人物の右往左往ぶりやこのジャンル特有のストーリー展開が、時にはコミカル、時にはサディスティックな読者の感情を巧みに刺激してくれることで、「現実には有り得ない事」が、あたかも目の前で起きている様な錯覚を惹起してくれると云う絶大な効果がある。真面目に考えれば噴飯物の設定が、予想以上の興奮をもたらす事になるのだ。その効果は大きい。 近年、このジャンルに参入してくる新人作家の多くに、このやり方の模倣者が多いと感じるのは、自分だけでは無いだろう。 だが、このワンテーマの方式には一つの弱点がある。それは、そのテーマの魅力(牽引力と言っても良い)次第で、作品の出来が大きく左右されてしまう所である。その力が強ければ、話をどれだけ引っ張っても読者は付いていけるが、弱い(若しくはテーマの類似性が高い)時には、作品半ばで読者の感情や関心は下がって(要は飽きて)しまい、至極出来の悪いコントでも見せられている様な気分に陥ってしまうのである。そう成ると作家の手練手管を以て登場人物にどんな事をさせても、読者の興味を惹き付けるのは至難の業であり、逆に書けば書くほど嘘臭く成ってしまうと云う危険をも孕んでいる。動作表現ばかりで心象風景が少ないのも、読者の想像力が刺激されない方へ加担してしまう。 そしてそれらが常態化してしまうと、読者の評価は両極端に成りやすい。 著書の作品に連作(シリーズ)物が多いのも、その辺りに起因していると思われる。そう成ってしまうと、特定のファン以外は付いていき難くなる。 今作は先程も触れた通り、過去作でも扱ったテーマの変形型では有るが、内容の奇抜さで読み進めていてツラい事は無かった。それでも中盤以降、当初の人物設定に囚われすぎた為か中弛みが起きてしまい、ワンテーマだけで作品を作り上げる事の脆弱さをも露呈してしまったように思う。 又著者は、動的表現以外でも「定型文的な(決まった)表現」を繰り返すと云う傾向が有る。例えば一人の人物を表現する際に、前にも使用した文章(フレーズ)をそのまま何度も使っている。これは錯綜する登場人物を判別し易くすると云う意味では正解かもしれないが、文学的表現として見る(読む)と「Wordの一括変換」の様に見え、言語表現(ボキャブラリー)の貧しさを嫌でも感じさせてしまう、残念な描写方法だと思う。 その点において先にも挙げた大家は、一人の人物を言葉巧みに(正に玉虫色の如く)比喩や表現を次々と変えて描く事により、時間経過だけでなく登場人物の容姿や心象に至るまで繊細に投影され、あたかも目の前に佇んでいるかの様な錯覚すら惹起してくれるのである。 言語の表現力は想像力の源泉であり、視覚的(画一的)表現では太刀打ち出来ないのが、文学の奥深さだと私は常々思っている。動的表現に於ける小説と漫画との違いにも、同じことが言えるだろう。 脱線し勝ちなので話を戻すが、今作はそのテーマ性の面白さで読者を惹き付け、読んでいる間は楽しい時間を過ごせる、お奨めできる良作だと思う。 但し、著者が更なる発展を望むのであれば、上記に挙げた諸要素について出版編集者側とも協議し、その方向性について改めて検討することを強くお勧めしたい。 ぽっと出の新人等はどう成ろうとも構わないが、著者に関しては正直このままでは勿体無いと云うのが、只の一読者に過ぎない私の結論である。

左衛門佐

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