死の美術大全 8000年のメメント・モリ

ジョアンナ・エーベンシュタイン(著者), 北川玲(訳者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2018/10/24
• JAN: 9784309255903

商品レビュー

2023/03/04

ミイラ、デスマスク、墓地の意匠、モーニング・ジュエリー、〈死の舞踏〉、〈死の勝利〉、〈死と乙女〉……。ヴィジュアルを通して西洋の死のイコノロジーを堪能する一冊。

先月読んだ『ゴシック全書』より、古典的なイメージの〈ゴシック〉に近いものが見れるのはこっちかもしれない。ひとつひとつは短いが、いろんな専門家が各分野の死にまつわるエッセイを寄せていて、それも読みごたえがある。
「密室殺人のためのドールハウス」を作った富豪、フランセス・グレスナー・リーの話が面白かった。推理小説好きのリーは、その財力でハーバード医学校にアメリカ初の法医学プログラムを設立し、彼女が作ったドールハウスは警察で実際に利用されていたという。女子供の遊びそのものであるドールハウスが血なまぐさい事件を解く道具になるあたり、とても19世紀末っぽいエピソード。
「キリストの人体模型」も見たことがないものだった。磔にされたキリストのお腹のところが開くようになっていて、解剖学的には正しくない臓器が覗く。キリストが人であり神でもあることを示すために作られたそうだが、キリストの肉体に対する歪んだ欲望と、その幼稚な造形にふしぎな神聖性を感じるのが印象的だった。