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三島由紀夫紀行文集
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2018/09/15 |
JAN | 9784003121917 |
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商品レビュー
3.8
8件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
三島由紀夫は朝日新聞の特別通信員という形で1951年末から世界一周の旅に出かけました。この旅の旅行記が『アポロの杯』になります。 三島はアテネやデルフォイの遺跡や芸術を堪能し、その思いを旅行記にしたためます。彼はこの世界一周旅行で様々な地を巡りましたが、この地に対する感動は明らかに突出しています。 そして三島がギリシャの芸術についてどう思うのか、そして自身の文学観、人生観にどのような影響を与えたのかが率直に書かれていますのでこれは非常に興味深いです。 『アポロの杯』には三島の原体験とも言えるギリシャ・ローマ体験がこれでもかと詰まっています。彼の文学や生き方を知る上でも非常に参考になる作品です。
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然程に長大でもない様々な篇が集まった一冊で、少しずつ読み進めるには好適かもしれない。 「三島由紀夫」という人物は、敢えて“現在”の流儀で表現すれば「メディア露出が多く、人気が高い文化人」というような存在であったのかもしれない。数々の小説―非常によく知られていて、学校の授業の“文学...
然程に長大でもない様々な篇が集まった一冊で、少しずつ読み進めるには好適かもしれない。 「三島由紀夫」という人物は、敢えて“現在”の流儀で表現すれば「メディア露出が多く、人気が高い文化人」というような存在であったのかもしれない。数々の小説―非常によく知られていて、学校の授業の“文学史”に題名が出ているような作品から、「それ?あの作家の作品?」という存在の作品、「そういう作品が?在った??」という作品まで―を発表している他、雑誌、新聞等へ様々な文章を寄稿しており、そういう文章も伝わっている。発表後に少し時日を経て本として世に送り出された例も在るようだ。そして“全集”にそういう文章の多くが収録されているようだが、本書はそんな“全集”から択んだ文章を一冊に纏めてみたということであるようだ。 本書は“全集”から「紀行文」と呼び得る文章を択んで纏めてみたという。三島由紀夫が「紀行」というようなことに強い思い入れが在ったか否かはよく判らないが、国外旅行をした経過、国内旅行をした経過、比較的近い辺りで街に出た経過を色々な形で綴って、種々の媒体で発表している。三島由紀夫の活躍は、概ね昭和20年代半ばから昭和40年代前半ということになるが、その期間の様々な文章が本書には収められている。 偶々、三島由紀夫が話しをしている様子が映っている映像を少しゆっくり拝見したことが在る。東京大学の学生等によるグループの招きに応じて、同大学の大教室を会場に、集まった学生達に向かって語り、発せられた意見に対してコメントをし、テレビカメラ等も入っている場所という様子であった。そういうモノを視て、御本人の話し口調、声の感じを何となく憶えている訳だが、本書は読んでいてそういう「口調と声音」が頭の中を過るような気がした。本当に「活き活きと語る」という具合に綴られた文章が集められた感の一冊がこの『三島由紀夫紀行文集』である。 前半部の大きな部分は、昭和20年代に船で太平洋を越えるようなこともして、米国、ブラジル、更に欧州諸国を訪ねた経過や、昭和30年代に米国や欧州を訪ねた経過が綴られた内容である。後半部は、色々な事由で国内旅行をした時の経過、少し街を歩いた時の事を綴った随想が集められている。「少し街を歩いた」というような事柄が、何か「小さな旅」という風に綴られていたのが酷く興味深いとも思った。 本書で綴られる「旅」は概ね昭和20年代半ばから昭和40年代前半の三島由紀夫が活躍した時代のモノである。そうなると、「現在の目線」で紐解く場合には少なからず「時間旅行」というような感も交る。「ここ…この年代にはこんな様子だった!?」と些か驚いた内容も散見した。が、それは綴った御本人の意図と全く離れた事項であろう。それはそれとして、各篇では現場で感じ、考えた様々な事柄、御本人が強く関心を寄せていて戯曲も多く綴った舞台鑑賞に関する事柄、モノに触れて考えた事として示される独特な問題意識の提起というような豊富な内容が盛り込まれ、実に興味深い。 本書を読んで、よく知られる作品である『潮騒』の取材や初めての映画化に関連して訪ねているという三重県の漁業の町や、雑誌の企画記事の取材や少し後に発表した小説の取材で訪ねたという熊野の話題が在った。そういう辺りを「訪ねてみたい…」というような「余計なこと?」も思った。 滅多に在ることでもないかもしれないが「好きな作家は?」とでも尋ねられれば“三島由紀夫”を挙げる程度に長く関心は寄せている作家である。最近、少々切っ掛けが在って、彼が綴ったモノをまた読むようになったのだが、本書を読んで「生身」の御本人が眼前に現れたような気さえした。「何処かを訪ねて、そして思う…」というような事柄を綴ってみる場合には、最も「本人らしさ」が反映されるのかもしれない。 膨大な量の全集から、なかなか好いモノを択んで纏めた編者の労にも敬意を表したい感である。
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自殺をした彼のことを知っている現代の我々としては、ある種の伝説化した文豪のように捉えてしまう三島由紀夫。 さりながら、彼の遺した多彩な文章を俯瞰してみるに、実に多面的な人物だったのではとも思う。 随筆となると、そんな彼が考えていたこと感じていたことを同時代的に触れることができる...
自殺をした彼のことを知っている現代の我々としては、ある種の伝説化した文豪のように捉えてしまう三島由紀夫。 さりながら、彼の遺した多彩な文章を俯瞰してみるに、実に多面的な人物だったのではとも思う。 随筆となると、そんな彼が考えていたこと感じていたことを同時代的に触れることができるのではと思い、本書を手に取った。 特に自身の「感受性」に対しコンプレックスを抱いており、その反動がその後の彼の活動になったという件は、とても腑に落ちた。 しかし、これが30歳前後の書く文章かと唸らずにおれなかった。
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