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岐路に立つ日本の大学 新自由主義大学改革とその超克の方向
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 合同出版 |
発売年月日 | 2018/05/01 |
JAN | 9784772613491 |
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岐路に立つ日本の大学
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日本国憲法は、民主主義、基本的人権の尊重、平和主義、立憲主義を基本原則とする国家社会の形成を目指してきた。戦後の大学は、平和と民主主義を基底に置き、教育を受ける権利(憲法26条)のもとで国民に開かれ、普遍的価値「学問の自由」(憲法19条)を原理として有し、それを保障するために「大学の自治」が法制的に保証されていると解釈されている。しかし、80年代以降に台頭してきた新自由主義は、市場原理のもとで効率性や金銭的価値を優遇する。大学においても、企業化、商業化の圧力が顕著となり、その本質すら変えてしまう力となっている。 2006年に全面改訂された教育基本法では「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」(第7条1項)。大学も社会組織である以上、社会の発展に寄与すべきことは当然である。しかし教育基本法に限らず、そもそも大学進学率が53%(ユニバーサル段階)の中、約800の大学全てに、深く真理の探究や新たな知見の創造を期待するのは現実的なのだろうか。問題発見・解決能力を身につけるという意味では、研究に裏付けられた教育は必要。しかし、大衆化した全ての大学(生)に「深く真理を探究して」「広く社会に提供する」ことを求めるのは現実離れの感が強い。 戦前の高等教育システムを念頭においた大学の種別化・類型化は、絶えず議論されてきた。中教審の「三八答申」(種別化)、「四六答申」(類型化)は実現しなかった。80年代の臨教審において、文科省型保守派と新自由主義の相克はあったが、90年代の大学審議会において、新自由主義大学改革は優位となり本格化する。種別化・類型化は「多様化」と呼び方を変え引き継がれるが、大学のユニバーサル化が進む中、「多様化」はより緊要の課題となる。 しかし、大学の多様化と同時に、教員・研究者の流動化が進まないと、多様化には長い年月を要する(一方、新自由主義のもとでは短期的に成果が求められる)。年俸制の導入で(テニュアを持つ)教員の流動化を加速させるのも一案とはいえ、マイナス面も少なくない(佐藤仁「教えてみた『米国トップ校』」角川新書)。 また、教育基本法は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」(第7条2項)とするが、新自由主義の台頭により、政府・済界から「短期的で数値化できる貢献」の圧力がかかる。その圧力は、ガバナンスへの干渉に及ぶ。政府・財界などが主張する「大学のガバナンス改革」は、教授会を始め大学構成員の権限や権利を縮小・弱体化させ、学長(理事長)に権限を集中し、学長が政府の方針を反映した決定をし易い体制を作ることにある。 しかし、そもそも大学が大学として存立し得るのは「学問の自由」「大学の自治」に由来する、というのは、日本国憲法の理念であるだけでなく、大学が国際的通用性を持つための要件でもある。 従って、大学構成員の参加と自治を基本とする、民主的な(対話がある)自治の構築が求められるはずだ。そもそも、「企業のガバナンス」と「大学のガバナンス」は、その基本において異なるはずだ。教育及び研究の特性を重んじる伝統的な大学観との軋轢が生じているのが現実だ。 新自由主義のもとでの大学改革は、アメリカの大学がモデルとなることが多いが、皮相的に形だけを採り入れるのではなく、日本の大学の経験や組織風土と擦り合わせながら、自主的で主体的な改革(民主的な改革)で行われなければならない。そういう意味では、国家の強権的主導による改革は成功(定着)しないであろう。 つまり大学は、構成員の対話に基づく自立した組織へと変わることが肝要。これができないから政府・財界から圧力がかかるのか、圧力がかかるから自立できないのか。ただの悪循環になってしまうのだろうか。
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