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介護民俗学という希望 「すまいるほーむ」の物語 新潮文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2018/05/27 |
JAN | 9784101214467 |
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介護民俗学という希望
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介護民俗学という希望
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「介護の無意識」 イノカシラレイコさん(仮名、90代女性)は「華麗なる一族」だった。 2人の娘はアメリカへ留学し、一人は関東の某自治体の副知事を務め、もう一人は全国紙に記名記事を書くくらいの記者だ。 娘さんたちが面会に来てしばらくすると、レイコさんは決まって力なく「もう帰って」...
「介護の無意識」 イノカシラレイコさん(仮名、90代女性)は「華麗なる一族」だった。 2人の娘はアメリカへ留学し、一人は関東の某自治体の副知事を務め、もう一人は全国紙に記名記事を書くくらいの記者だ。 娘さんたちが面会に来てしばらくすると、レイコさんは決まって力なく「もう帰って」と云っていたものだった。 多分しんどかったのだろうなと思う。レイコさんは心臓が良くない。平常時の脈拍は40回/分程度で、少しの運動でも喘鳴が起こる。それでも娘さんたちは機能訓練をオプションで依頼し、立ち会っては実の母に対し「ほらレイちゃん頑張って!」と励ましていた。それが終わると自分たちが用意した脳トレプリントが待っている。 娘さんたちが持っていた価値観とは、六車さんが疑問を呈していた、「老いは対処すべき課題である」というものだったのだろうなと思う。自立支援という言葉が孕む矛盾が表われた一場面であると思った。「自分でできること」を強要される一方で、介護される対象として主体性はなきものとされる。 六車さんが提唱する聞き書きという民俗学の手法は、高齢者を介護を受ける対象から、歴史を教えてくれる人生の先輩へと立場を転倒させる。 理学療法士の三好春樹という人がいる。理学療法士ながら介護業界に積極的に発言をされている方だ。 やや乱暴に彼の考えをまとめると、主流であるエビデンスに基づいたプロによる治療に対し、シロウトによる生活に基づく介護を対置する。 前者は意識、後者は無意識を考えのベースにしているんじゃないかと思う。高齢者が過ごしてきた歴史の豊穣さもきっと無意識の領域に根ざしている。 日々業務に追われて聞き書きをする暇もあまりないが、六車さんのような風雲児ばかりが時代を変えるのは面白くない。介護の無意識を担う一人として何かできることはないかと考えた。 聞き書きもさることながら、持ち味を生かした「笑い」の活用とか。
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「介護民俗学」を提唱する六車さんのことは何となくそういうものがあることくらいしか知らなかったので、実際のところどんなものだろうと一冊読んでみた。 この本ではデイサービス施設での利用者の高齢者たちとのエピソードが紹介されている。高齢者の話すことを聞き書きしているということだけど、聞...
「介護民俗学」を提唱する六車さんのことは何となくそういうものがあることくらいしか知らなかったので、実際のところどんなものだろうと一冊読んでみた。 この本ではデイサービス施設での利用者の高齢者たちとのエピソードが紹介されている。高齢者の話すことを聞き書きしているということだけど、聞き書き自体の効用というより聞き書きできるゆとりをつくることとか、高齢者の話をきちんと聴くスタンスで向き合うことが大事なのだと思った。 紹介されているエピソードがしみる。戦時中に娘時代を送った人々の話からは、けっして暗く悲惨なばかりの青春時代でなく、当時は当時なりに日々を楽しんでいたことがわかる。教科書とかでは伝わらないことだと思う。また、家族やケアマネとかの話で急に施設を移ることになった紀子さんのエピソードは胸が痛い。昨年、子ども自身にかかわることは子ども自身に話して意思を確認すべきという「子どもアドボカシー」をかじったけれど、高齢者に対しても、「自分のことを自分で決める」ことが蔑ろにされている事象が多くあるのだろうと憂う気持ちになった。 こうした事象に対し、六車さんは無力感を綴っている。無力感に落ち着かせてしまうのはいかがなものかと思ったけど、どっぷり介護職でない六車さんだからこそ、こういう青いことを書けるのかもしれない。そんなこと言ってもしょうがないからと表に出さないと、それは結局残ることなく消えてしまう。青いけど大切なこと、隙のようなものを当たり前にせず表に出しておくことが、何とかよりよい次を導く糧になるかもしれないと思った。介護どっぷりでない視点で、書く能力をもつ人が介護現場に飛び込んで、疑問や違和感を伝えてくれるというのもこの本の価値の一つだと思う。
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民俗学の研究者だった女性が、介護施設で働きながら、「聞き書き」のスキルを生かしてみたところ、施設運営やサービスが劇的に変化していく。 民俗学X介護という組み合わせがビックリな組み合わせだが、介護する対象が歴史の詰まった高齢者なのだから、ある意味情報の宝庫と日々接しているようなものだ。 風船爆弾工場の話や、満洲での生活など、大変興味深い生活史。 ただの機能低下した老人の世話、ではなくて、「あなたに興味がある」と真摯な眼差しを向ける介護者によって、おじいちゃん、おばあちゃんが劇的に変わり始める。盆踊りの振り付け指導したり、お料理の腕を奮ったり。 思い出の味の再現クッキング、リアル人生すごろく、いいね。 人生の最後にこんな風にヒューマンに扱ってくれる介護者に出会えたご老人たちは幸せだと思う。 「回復や機能向上を目指すだけじゃなく、ゆっくり下降する生活」 自分も愉快な仲間に囲まれ、楽しいイベントやりながら老いる、素敵な老人ライフ送りたいなぁ。
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