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ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2018/03/01 |
JAN | 9784000612586 |
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ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光
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商品レビュー
4.3
3件のお客様レビュー
2024年8月11日(日)、亀山郁夫さんの『ショスタコーヴィチ 〜引き裂かれた栄光』を読み終えました。400ページ近い大作です。途中で挫折するか?と思いながらページを繰り始めたのですが、いつの間にか引き込まれました。 この本に出会ったのは、友人にクラシック音楽のコンサート...
2024年8月11日(日)、亀山郁夫さんの『ショスタコーヴィチ 〜引き裂かれた栄光』を読み終えました。400ページ近い大作です。途中で挫折するか?と思いながらページを繰り始めたのですが、いつの間にか引き込まれました。 この本に出会ったのは、友人にクラシック音楽のコンサートに誘われたのがきっかけ。そのコンサートの演目の一つに、ショスタコーヴィチの交響曲第5番があって、事前にCDを借りて聴きました。その音楽には何だか心惹かれるものがあり、付属の解説にも目を通しました。20世紀の激動の時代を生きた芸術家、ショスタコーヴィチのことをもっと知りたい!地元図書館の蔵書を検索して出てきたのが本書です。さっそく借りて読み始めた次第です。 ショスタコーヴィチを聴くのも初めてだし、クラシック音楽のことには全く知識が遠い私です。なので本書の内容を深く理解するのはだいぶハードルが高かったです。詳細をきわめる多岐にわたる専門的な曲目解説はほとんど理解できませんでした。 が、著者が分析する楽曲のなかに込めらたショスタコーヴィチの隠された様々なメッセージ、権力への抵抗・阿り・野心・保身・・・には驚きの連続でした。ショスタコーヴィチが生きた20世紀の時代背景の記述も興味がつきません。ロシア革命、大テロル、世界大戦、スターリン独裁・・・激動の20世紀ソヴィエトを生き抜いた音楽家の生涯にふれることができてよかった。 著者の文章が心に残る。「ショスタコーヴィチの個人としての輝きは、まさに闇のなかの光であり、明るい陽光のもとにあっては輝きえないものではないか・・・」 友人と行くクラシックコンサート本番までまだ時間がある。あらためてショスタコーヴィチの作品をCDで聴いてみようと思う。本書を読み終えて聴くショスタコーヴィチは、だいぶ違って聴こえるかもしれない。
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亀山郁夫さんといえば私が知りうる限り、光文社古典新訳文庫で「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」「悪霊」「白痴」などとドストエフスキー作品の翻訳を精力的に行い、東京外国語大学と名古屋外国語大学の学長を歴任し…とこれだけでも十分すごいのに、ショスタコーヴィチの本まで出すなんて!亀山さんの...
亀山郁夫さんといえば私が知りうる限り、光文社古典新訳文庫で「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」「悪霊」「白痴」などとドストエフスキー作品の翻訳を精力的に行い、東京外国語大学と名古屋外国語大学の学長を歴任し…とこれだけでも十分すごいのに、ショスタコーヴィチの本まで出すなんて!亀山さんのどこに、そのような時間、エネルギー、そしてモチベーションがあるというのだろうか。 この本での亀山さんの筆運びは、まさに微に入り細に入りという言葉どおりの細密度。でもはじめは、亀山さんのいわゆるオタク精神(=著述家としての亀山さんのスーパー凝り性)から来てるのかと思ってた。でも、オタクなだけではここまでモチベーションは持続しないはず。だからもう少し亀山さんをそこまでショスタコーヴィチ(以下「作曲家」と記す)に引きつけた“何か”を深く考えてみる。 ひととおり読み通した後で、亀山さんを作曲家にここまで強く引きつけたキーは、2人の『共通点』にあるのでは、と思い至った。つまり、亀山さんはショスタコーヴィチに自分と同質なものを多く見いだしたがゆえに、ここまでのめり込んだのでは? ショスタコーヴィチは多作の部類で歴史的名作を書いたのは誰もが疑わないはずなのに、一方で「毀誉褒貶が激しい」音楽家である。「トランス状態のやっつけ仕事」と言う者もいるくらい。また時の権力に迎合しつつ自分の音楽家としての満足をぎりぎりの所で得ているように見える(亀山さんは「二枚舌」と表現)etc. わたしがあえて冒頭で亀山さんの活動歴をあげたのはここに帰着させるため。亀山さんが多くの著作を世に出せば出すほど、評価が高まる一方で、まるで乱作を批判するかのような辛口のレビューも目にする(亀山さんの学界での一定の評価や書籍売上げの実績は誰もが認めてもよいと思えるのに…)。 作曲家も亀山さんも、自分の力を信じさえすれば優れた作品を世に出す才能を有してるのだという矜持の一方で、自己に内在する芸術の作品化というものと対極に位置する権力や世間の評価というものに目配せせざるをえないというような“矛盾”から身をかわし切れず、芸術に真摯に向き合えば向き合うほど苦悩を増大させたという点が共通しているのでは? そして最終章に至って、いよいよ亀山さんが作曲家へ強いシンパシーを感じたのだと私は確信した。 作曲家は死ぬ間際まで、自分の満足できる作品を目指していたのだという。世界的な評価をすでに受け、もう“過去の栄光”でも十分生き永らえられるはずなのに、作曲家は満足に至らず、常に前作を上回る作品を書こうとしていたのである。 つまり、二枚舌や権力へのおもねりは、自己の作品の芸術的到達点をより高くするための方便だったのか、ということである(作曲家亡き今、その本心は知ることはできないけれど)。 そして亀山さんも、現状のロシア文学者としての一定の評価で落ち着くことを良しとせず、最後まで高みを目指す精神でありたいと考えているのならば、この400ページに近い大作を成し遂げずにはいられなかったことは改めて理解できる。 (※ちなみに私はショスタコーヴィチの曲はほとんど知らず、交響曲第□番と言われてもまったくピンとこないが、唯一知ってたのは交響曲第5番第4楽章。 これは朝日放送の「部長刑事」のオープニングで使われてたから、私と同じ年代の関西人なら誰でも知ってる曲で、知らないうちにショスタコーヴィチが刷り込まれていた(笑)。)
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ショスタコーヴィチは、「わかりにくい作曲家」である。彼の生涯だけでなく、その残された曲についても、どうも「わかりにくさ」が付いて回る。例えば、彼はスターリン主義者だったのか?とか、いくつかの交響曲は旧ソ連の体制を賛美する曲だったのか、などという疑問がどうしても頭の片隅を占めるので...
ショスタコーヴィチは、「わかりにくい作曲家」である。彼の生涯だけでなく、その残された曲についても、どうも「わかりにくさ」が付いて回る。例えば、彼はスターリン主義者だったのか?とか、いくつかの交響曲は旧ソ連の体制を賛美する曲だったのか、などという疑問がどうしても頭の片隅を占めるのである。 この評伝は、そんな「わかりにくさ」について、ショスタコーヴィチの生涯とその作曲を通じて、一つの解釈を与えてくれている。今まで聴いてきたショスタコーヴィチの作曲の数々を、もう一度あらためて聴き直してみたくなった。
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