OKINAWA1965

都鳥伸也(著者), 都鳥拓也(著者), 佐野亨(編者)

• 販売会社／発売会社: 七つ森書館
• 発売年月日: 2018/03/23
• JAN: 9784822818944

商品レビュー

2018/09/06

未来のために戦争の記憶を伝えようという試みは、各地で細々となされてきた。
けれど、日本全体で共有できる物語は作り上げてこられなかったように思う。

「戦争があって、日本のあちこちが焼け野原になり、原爆を落とされて、戦争が終わって、驚異的な経済復興を成し遂げた」
この貧弱な物語の中には、自ら生きる日本人の姿が無い。異民族だから、外国人だからという理由で差別を良しとした日本人の姿が無い。

「驚異的な経済復興」だって、アジアの人々の犠牲の上に成立したことだった。「日本人が頑張って、良い時代を築いた」はうぬぼれが過ぎる幻想だ。

「そういう時代だった」は理由にならない。当時の人たちは殺していいと思ったから殺したんだし、強姦していいと思ったから強姦したし、虐待していいと思ったから虐待した。

人を非人道的に振舞わせるシステムがあるのは確かだ。時代や環境は人間の生き方を左右する。
けれど、自分が今いる現実の中でどんな態度をとるかは自分で選べるのではないか。そういう自由だけは、どんな状況でも私たちには残されているんじゃないか。

生きた時代によって、受ける制約や限界はあると思う。それを責めるのもまた無慈悲なことかもしれない。それでも未来のために、死体蹴りが必要な時もあるのかも。
過去に当たり前だった生き方が、未来を阻害しているのなら、過去の生き方を否定して、書き換えなくちゃならない。

差別していいと思うから、差別するための理由をでっち上げる。それが日本人の現実なら、そこからはじめるしかない。
現実から目を背けることが大日本帝国の力の源だ。大日本帝国を葬り去りたいなら、現実をひたすら見つめなくては。

被害者としての物語、加害者としての物語をばらばらに散らかしておくだけでは仕方ない。
これから先をどう生きるか、を繰り返し問いながら「敗戦後日本の物語」を語る必要を感じている。

だって、日本でいま生きている人、これからを生きる人を、殺して食い物にするために、大日本帝国が刃物を研いでる姿が見えるんだもの。

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