ライナスの毛布 ユニヴェール6

高田ほのか(著者)

• 販売会社／発売会社: 書肆侃侃房
• 発売年月日: 2017/09/01
• JAN: 9784863852785

商品レビュー

2024/03/06

井ノ上マサルさんによる装画がかわいらしい。
私のなけなしの乙女心にグッとくる。

冒頭からのメリーゴーゴーラウンドという連作が出色。
ミカ、ユウ、シュウの、３人の恋愛模様を描いていてスリリングで切ない。
もしかして、木下龍也さんと鈴木晴香さんの『荻窪メリーゴーランド』は、この連作のオマージュなのでは？

［わたしの声で主任の首が動くのを確かめたくて「アメいりません？」］『ミカ』

解説の加藤治郎さんはこの一首を“「アメいりません？」という自分の声で、主任の首が動く。彼を自在に操ることができるのを確かめがっている。新入社員でこういう感覚をもつとは、ちょっと怖い感じがする”と書かれている。そうですね。男女逆にすると怖さが際立ちますね。でも、こういうちょっと背徳感ある感覚ってありませんか？

高田さんは少女マンガに子供の頃より惹かれていて、はじめて短歌を読んだとき、少女マンガと同じくらいの衝撃を受けたそうだ。
それを活かし、少女マンガの短歌化に挑戦している。
今風に言えば、【推し短歌】だ。

［後ろからごめんねと抱きしめられて僕は黄色い付箋紙になる］吉住渉『ハンサムな彼女』

［暗闇ですねてる君にひまわりをギュッと搾った光をあげる］矢沢あい『天使なんかじゃない』

［あまりにも直球すぎて告白は君を飛び越え山びことなる］椎名軽穂『君に届け』

Ⅱ部は作者の日常が色濃く反映されているのではないかと思われる歌が詠まれているらしい。

『夏を呼ぶ』の連作はなんと、下着ブランドのトリンプの店に買い物を行ったときのことが詠まれてる。
男性には、入ったことのない世界で、思わずどきりとするのではないだろうか。

他にも、

［耳元で打ち明けられる春の日の摘むと失うツメクサのこと］

［たきたてのおこめのうえに黄身だけをのせて白身はみそしるにとく］

などが好きです。

装画を一新し、新作を付け加えた増補版が新しく２０２３年に出たそうです。

2018/04/30

短歌集。

短歌で綴る恋愛物語。
少女漫画を短歌で表す。
二部は歌人の日常を歌う。

前半の連作は、恋愛ドラマを観ているよう。
ユウかミカかと聞かれたら断然ユウに肩入れする私。
でも、世の中はミカのような子が
圧倒的にいろんなものをかっさらっていく。
狡いのか強いのかわからないけれど。
多分、これがドラマなら、
シュウもシュウよねとディする自分が見えるようだった。

中盤は
少女漫画への溢れる愛が歌われている。
少女漫画の名作を一つの短歌で表すと・・・
私はほとんど漫画を読まない。
皆が少女漫画に夢中なころ、たしかに
少しは読んだけれど、あまりタイトルも覚えていないのだけれど
それでも、近年の実写化なんかで知っているものも。
熱く熱く歌うその歌はたった一行で
私を漫画を読んだ気にさせる。
熱い思いだわ、全く。
きらきらのおめめの向こうに向日葵が映るようだ。

二部は作者の日常のようである。
祖父母のこと、妹のこと
恋人のこと、恋人が夫になる日のこと。
それも、歌人の好きな少女漫画の中の世界に
リアリティがスパイスに加わったようだ。
夏が始まる前に新しい下着を買い求める歌がなんか好き。
確かに、丁寧過ぎて恥ずかしいことあるよね。

2017/12/11

p7 ドラセナに水をあげてはダメですか？課長部長社長・・・・・枯れます！　
p10（雨の日は滑りやすいのでご注意を手は出しませんのでご安心を）　
p11　耳たぶにちいさなホクロをみつけたの雨って実はときどきあまい　
p27 突然に氷はカランと水のなか脳に酸素を運べなくなる　
p31 「あの、主任お水をあげてはダメですか？最後の一葉はまだミドリです」　
p77 ライナスの毛布になって包む夜のしんしん積もる二月のひかり　
p110 たきたてのおこめのうえに黄身だけをのせて白身はみそしるにとく