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サンショウウオ戦争
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 海山社 |
発売年月日 | 2017/10/01 |
JAN | 9784904153116 |
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サンショウウオ戦争
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商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
チェコの著名な作家カレル・チャペックによって書かれたSF小説。第二次世界大戦の数年前に書かれた。 孤島で独自に進化したオオサンショウウオが、人間によって安い労働力として繁殖され、軍事にまで利用されるが、人間に土地を要求しだし世界的な戦争にまで発展してしまう。 訳者の後書きでも言及されているが、第一章と続く第二・三章では、かなり雰囲気が異なる。第一章ではファンタジックな物語であるが、第二章からは新聞の切り抜きから史実をまとめる体で、淡々と出来事が語られる。これは作者の多芸ぶりを遺憾無く発揮していると同時に、時代の不穏な空気を読み取ったため、ファンタジーとして続けるのは不可能と判断したためかもしれない。 初めは醜くも愛らしい動物として描かれる、新種のサンショウウオだが、急激に数を増していくうちに不気味な集団に変わっていく。この辺りの描写は見事で、人間と生き物の関わり方の本質をうまく表していると思う。取るに足らない一匹のミミズが、地球を耕し豊かな土壌を育てていると考えたダーウィンの視点のようでもあると感じた。 また、時代的にも世界大戦や資本主義の行き詰まりを予言しているという見方もできなくはないが、作者が序文で自ら告白しているとおり現代のことを書いており、当時の不穏な時代を素直に物語にするとこうなってしまった、のだろうと思う。確かにサンショウウオは人類の脅威であるが、作者がサンショウウオを愛しているのが伝わってくる。自己の利益のために権謀術数する人類よりも、無心で働き続けるサンショウウオは確かに人類よりも生き残るべきではないだろうか。。 それに、あの第二次世界大戦が起こる前の時代に書かれたところが、この小説の価値だと思う。あの戦争を経験してしまった人類にはとても書けない牧歌的な雰囲気(訳者の解釈が素晴らしいこともあると思う)がこの小説をより魅力的にしているのではないか。 映画『紅の豚』の時代設定が1930年頃と言われている。個人的には、当時の不穏な空気とのんびりとした空気が混ざったような、第一章の空気感はとても魅力的に感じた。できればサンショウウオと船長の友情の話のまま読めたらそれはそれで楽しく読むことができたのだろうが、それよりも遥かに遠くに連れて行かれてしまった。ヴァン・トフ船長とタパ・ボーイの描かれなかった物語や、サンショウウオが人間の目の届かない海中でどのような生活をしていたかなど、読んだ後も想像は尽きない。栗栖茜さんの訳も世界観とぴったりで本当に素晴らしかった。
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シニカルな笑いと鋭い風刺が面白い傑作。 連作短編のような第一章。新聞の切り抜きという形をとった架空の歴史解説のような第二章。ついにタイトル通りの「戦争」が始まる第三章。 と、読み味が変わっていくので飽きがこない。 知性を持った動物に人間が滅ぼされるという筋書きの話はごまんとあるが...
シニカルな笑いと鋭い風刺が面白い傑作。 連作短編のような第一章。新聞の切り抜きという形をとった架空の歴史解説のような第二章。ついにタイトル通りの「戦争」が始まる第三章。 と、読み味が変わっていくので飽きがこない。 知性を持った動物に人間が滅ぼされるという筋書きの話はごまんとあるが、サンショウウオというチョイスが絶妙だ。 かわいらしさと不気味さを兼ね備えた存在で、読者が感情移入しようとすると突き放してくる構成も見事。 国家を、国民を、ジェンダーを、職業を、階級を、イデオロギーを、人間全てを平等にシニカルに笑うが、では果たして著者はどういった答えを提出するのか……というラストでとんでもないぶちかましをしてくるので笑った。でもこの小説が書かれた時代ならば仕方ないとも思ってしまう。
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