マイケル・ジャクソン来日秘話 テレビ屋の友情が生んだ20世紀最大規模のショービジネス

白井荘也(著者)

• 販売会社／発売会社: DU BOOKS
• 発売年月日: 2017/09/01
• JAN: 9784866470337

商品レビュー

2021/04/08

うむ。面白い。面白いです。

テレビ業界の超一流の人物が、音楽業界の超一流の存在を語る、という体ですね。

音楽人が、マイケルを語る。マイケルファンが、マイケルを語る。それも当然面白い。そらそうです。同じジャンルの人が、同じジャンルの超一流を語るのも、超ファンの人が、超ファンである対象の人を愛を込めて語るのも、面白いに決まっている。

でも、この本の著者は、基本的には「ビジネスで」マイケルと接してるんですよね。マイケルが途轍もないスゲエ人物である、という事は認めつつも、白井さんにとっては、いっちゃん大事なのは、自分の所属する日本テレビの利益のために、マイケルを日本に招聘してライブしてもらう事。

日本の音楽文化発展のために！という思いもあるのは分かりますが、まず第一は会社が儲かるため。そして会社の名誉のため。そのために、マイケルのジャパンツアーのために、もうガンガンにガンガンに超大変な交渉にあたる、というその側面からの物語である、ってのが、面白い。マイケルの、どファンである自分としては、こういう、ある意味、超一流の人なんだけどガチのマイケルファンではないよ、っていう人からのマイケル像の描き方と、当時の世の中の流れを観ることができるのは、大変に勉強になります。

ホンマのホンマのガチの超一流の海外ミュージシャンに、日本に来てもらってライブしてもらう、っていうのは、ホンマにウルトラ大変なんだな、ってのがね、よく分かります。そらそうか。ビジネスだもんな。莫大な額の金が動くわけだもんな。みんなで幸せになろうぜ。俺達は夢物語をお届けするんだぜ。ラブ＆ピース＆ミュージック＆ピープルオールハッピー！とかの楽観的な音楽最高だぜ話、だけで片が付く訳ないじゃん、っていうね。

いやあ、ビジネスって凄く凄いね。でも、凄く凄いんだけど、それでもやっぱ、音楽は愛すべきものであることが究極の根底には有ってほしい、甘っちょろい事言わせてください、っていう思いもある、という、そこ。そこがホンマに絶妙な塩梅の著書なんですよね。いやあ、良い。

ちなみに、マイケル関連の話だけではなくて、テレビ番組黎明期の音楽と笑いをどう結び付けるか？みたいな店の話とかも、すげえ面白いです。ドリフターズの話（ベンＥキングの方のドリフターズじゃないよ）とかも、マジで当時のリアルな雰囲気が分かって最高です。いやあ、今の時代では伝説になってることでも、当時は、みんな若かったんだねえ～、って分かるだけでも最高です。