皆川博子コレクション(10) みだれ絵双紙 金瓶梅

皆川博子(著者), 日下三蔵(編者)

• 販売会社／発売会社: 出版芸術社
• 発売年月日: 2017/09/25
• JAN: 9784882934677

商品レビュー

2020/08/17

カメオの孔雀は、お金持ちの纏足の方法からですかね･･･。
初めてまともにやり方知って、あまりの怖さに震えてしまった･･･。それを我が子に強いる母親も、それを性的に愛でる男性の傲慢さにも･･･。怖いけど、これが異文化か･･･。
”みだれ絵”という題目通り、淫らがましくみだれに乱れた古代中国の四大奇書『金瓶梅』の舞台を舞う男と女を、現代の春画として豪華絢爛に描き上げた数々の挿し絵を手掛けるのは巨匠・岡田嘉夫。･･･あまりの豪華さに、目が･･･目が足りない！と声を上げてしまうこと請け合いです。
不勉強なもので原書は未読なのですが、皆川先生！！？といつもの読者が困惑するほどの猥雑官能絵巻です。あえてなんだろうけど、皆川先生がここまで俗世間の欲にまみれた地獄へ一直線な男と女たちを描かれるとは･･･。いや、これも岡田氏の絵筆が引き出したパワーなのかもしれない･･･。
随所に現れるいつもの皆川節ですが、ハイテンションなときの「妖櫻記」ぽい地の文が多くて、皆川先生楽しんで書いてるな～～～～！！！となんだか笑ってしまった。ご本人も仰ってるけど、いつもはヘビーかつロウな文体が持ち味だもんな、そりゃたまには砕けたいよな･･･。一読者ながら微笑。

同時収録の短篇は5本。こちらは和物ですね。
「暁けの綺羅」み、皆川博子〜〜〜！ってミステリ全開。憶測も何も振り切る、人間の業の真実。美しい男が死して今なお周りの人間男女問わず狂わして…っての。み、皆川博子〜〜〜！！！
「平文」おおお！！？幻想･･･いやSF！！？ちょっと皆川先生ぽくないような･･･でもぽいような･･･。
「桜川」めちゃめちゃ好きです。進言してくだすった戸田和光氏、サンキューでした･･･。時間の流れに流されない、流せない罪っていうのは、皆川文学のテーマの一つな気がする･･･。好きだ。
「曽我物語抄」浅学なのですが、皆川先生版ダイジェストだったそうです。
「宿かせと刀投出す雪吹哉ー蕪村ー」与謝蕪村も謎多いよな～～～そんなことありませんか？？初出は書き下ろしアンソロ＜異形コレクション＞だそうで。異形コレクションもまた読みたいな･･･面白いですよね。

2020/06/05

御歳65歳にして、傑作「金瓶梅」のリライトに挑むという。心意気だけでも惚れ惚れしました。さらに絵双紙と銘打って挿画と本文を一体化させる表現形式も斬新です。原作では枠組みを借りただけの「水滸伝」から、更に「水滸伝」色を増しているのも興味津々です。でも、うっとりしながら読み進めると違和感が。まるで「金瓶梅」愛が感じられません。春梅や潘金蓮をはじめキャラの性格も変わりすぎです。山田風太郎先生のスピンオフは原作へのリスペクトがあり、世界観に全く齟齬のない傑作でしたが、本作は悪ふざけが過ぎ、冒涜の感があります。いくら皆川さんでも原作を尊重しないリライトは謹んでほしいものです。

2019/08/01

＜収録作品＞
みだれ絵双紙金瓶梅
破調『金瓶梅』
暁けの綺羅
平文
桜川
曽我物語抄
宿かせと刀投出す雪吹哉―蕪村―