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名作をいじる 「らくがき式」で読む最初の1ページ
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 立東舎 |
発売年月日 | 2017/09/15 |
JAN | 9784845630776 |
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名作をいじる
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商品レビュー
4.3
4件のお客様レビュー
ブクログ様から頂いた、大変エキサイティングな本。 頂いてからまあひと月以上、さんざん私はこの本を読み返し、どうしても好きになれなかった作品に取り付いては、噛み砕いていた。 大体我々は、本を汚しちゃいけないと思っているフシはないか?愛書家たるものきれいに読みたくて。それはそれで...
ブクログ様から頂いた、大変エキサイティングな本。 頂いてからまあひと月以上、さんざん私はこの本を読み返し、どうしても好きになれなかった作品に取り付いては、噛み砕いていた。 大体我々は、本を汚しちゃいけないと思っているフシはないか?愛書家たるものきれいに読みたくて。それはそれでもいいのだけれど。読書が苦手な方も特に。書き込みなんかしたら文句言われそうで、きれいに積読。あるのでは? ところがこの本では、思ったことをバリバリ書き込んで良いという。しかも通読じゃなくっていいという。最初の1ページ。つまらない、分からない。疑問に思った心の声を本に書き込み、ツッコミまくって読んでいいという。そこには「いい子の顔」「わかったフリ」「カシコいという見栄」一切必要ない。もちろん、共感もあり。 実際に著者の阿部公彦先生が、有名な(作品名はなんとなく知ってる)作品に、ツッコんでる例を載せておられる。もう、その書き込みが面白い。私達はどこかで、いつもこういう事は言っちゃいけない、とか制限をかけているけど、それをやめると実に読書が気楽なのである。 自分しか見ていない本。そこでくらい正直でも死にはしない。私は、ブクログでも何度も投稿しているが、漱石が嫌いだった。どうも重苦しく肌合いが合わない。好きなのは『坊っちゃん』『虞美人草』だけ。そこで苦手の『こころ』に書き込みをしてみた。 「ややこしい」とか、 「どうして全員そう悲観的なの?近代日本でしょ?新時代よ?もっと、一旦難しく考えるのよせば?」 とか、まあよくも嫌いな理由が書けるものだが…。ふと。こんなことを書いた。 「まるで服や建物だけ通気のいい華やかさ。心の中には暗い日本家屋に閉じ込めた、旧来日本のしっぽがくっついている。まるで食べ残したエビフライのしっぽのよう」 外見だけ颯爽と。内心は神経質な陰影のある和室においている。そういう印象を持ったわけだ。まあ、これでは齟齬が起きて、苦しくもなるのだろう。これが、漱石の描いた、明治という時代の正体、実感なのかな?って感じて。粗雑な感想だが、ちょっと近づけた気がした。 次に同じように、卒業研究のために読むべき本に、コピー取って読んでみる。まあ出るわ出るわ。共感、批判、疑問、エモい…そしてもっと深掘りすべきところ、そっとしておくべきところ…。その本に対して思ったことが、一目瞭然。ノート作り直すよりよっぽどアクティブで、頭に残る。次開いたら一発でその記憶がわっと押し寄せてくる。 正直、使えると思った。手を動かして読んでるから、意外と飽きない。そのとき考えたフレッシュな気持ちや意見や考察を、二度読みしないでもとっておける。 どんな相性の悪い本も、分からない箇所も、どこでどうわからなかったのか、つまらなかったのか、または面白いのか、二度目からは自分が最強の案内人になってくれる。だから、うりゅうりゅ言いながら、なんだかんだで読み通してしまうのだ。 読書感想文なんか、この書き込みを正直につなげて整理したら、まんま書けてしまう。真っ白の愛想のない本を、ええと、何だったっけとひねり回す、あの面倒くささ、ウザさとはおさらばできる。苦手な方にこそやってみて欲しい…。ほんとにその通りだった。 これは著者がたいへんに優れた読み手であることの証であるし、読書のやり方、手の内を気前よく見せてくださってるということなんだけれど。 私、ついでに告白すると、志賀直哉の小説って、 『女性が子供連れで列車に乗ってて、信玄袋持ってる』 という描写だけを、子供の頃から覚えてて。信玄袋って言葉から、あの、きなこと黒蜜で食べる信玄餅を連想し、紺の絣生地に、白と赤の武田菱の模様の袋を想像。中にはおみかんやおいしいお菓子、手慰みのかわいいおもちゃもあると、そこまで事細かに書かれてもいないのに思い込んで、内容より、どんなお菓子が入ってるかばかり考えていたことが、この読書法によって判明した。 読書なんて、そのくらいのんきに読んでも良いのだ。お菓子の味を、生唾飲んで想像していた、小学生の私が、にかっとページの向こうで笑っている。
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文学者による、小説の読み方が分からない、という人に向けた読み方指南書。とは言いつつ、やっていることは、とてもお手軽で、より本を面白く読む上でとても参考になった。 著者は、小説を読むときの方法として、本文を「いじる」ことをお勧めする。ここで言う「いじる」というのは、思わず「なんじ...
文学者による、小説の読み方が分からない、という人に向けた読み方指南書。とは言いつつ、やっていることは、とてもお手軽で、より本を面白く読む上でとても参考になった。 著者は、小説を読むときの方法として、本文を「いじる」ことをお勧めする。ここで言う「いじる」というのは、思わず「なんじゃこりゃ?」と言いたくなる部分に、鉛筆で記しを付けて、どこがおかしいか、忘れないようにコメントを書き込むこと。難しい小説ほど、意味が分からず、先に進むのが面倒くさくなってしまうのだが、まさしく、そうなってしまう原因の部分に「どうしてこんなふうになっているんだろう?」「どうしちゃったの?」という疑問をぶつけて、その異様さを楽しもうと言う。 この「いじる」ということに関して、著者は「内容を読んで味わうとか、考えるとか、批評するといったややこしいこと」ではなく、「読む以前の行為」だと言っている。本書では、著者が実際に、名作の最初の1ページを「いじって」、そのいじりに対する自分なりの答えを解説している。プロが小説を批評するときに、その手前でやっていることを見せてくれていると言う意味で、面白かった。 小説をちょっと背伸びして読みたい、そんな人に読んでもらいたい。
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名作の書き出しを引用し、傍線や書き込みでツッコミを入れていく。 そのツッコミに、いちいちハッとさせられる。 この筆者のヨミは只者ではない。 小説を読み込むとはこう言う事なんだな。 こう言う読みこむセンスというか、修行ができている人は、小説読めば読む程、どんどん小説の味を噛み締...
名作の書き出しを引用し、傍線や書き込みでツッコミを入れていく。 そのツッコミに、いちいちハッとさせられる。 この筆者のヨミは只者ではない。 小説を読み込むとはこう言う事なんだな。 こう言う読みこむセンスというか、修行ができている人は、小説読めば読む程、どんどん小説の味を噛み締められるんだろうな。 筆者を尊敬してしまいました。 例えばの本文からの引用 ____ 林芙美子は一見、この「ドライで切り詰めた文章こそが名文だ」という考えを実践しているように見えるかもしれません。でも、実際には冒頭に歌を引用し、しかも未練たっぷりにその歌から距離を置こうとすることで、かえってドライな文章が隠しもつ歌への憧れを漏れださせているとも見えます。『放浪記』の冒頭が力を持つのは、、歌を前にして頑張って「散文」で居続けようとする語り手の、その「がんばり」の過剰さに忍耐と義望とが見て取れるからです。
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