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幸田文 「台所育ち」というアイデンティティー
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 田畑書店 |
発売年月日 | 2017/09/01 |
JAN | 9784803803457 |
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幸田文
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幸田文入門と言うには、少し作品を読んでから入ったほうが良い。まとまった作家論としてはエッジの効いた論集であるが、頭書の作品論は『崩れる』に依拠するもので、それを一読していないと理解が苦しい。 論文集の場合、そこに展開されている作家論が魅力的であまり当該の作家を読み込んでいなくと...
幸田文入門と言うには、少し作品を読んでから入ったほうが良い。まとまった作家論としてはエッジの効いた論集であるが、頭書の作品論は『崩れる』に依拠するもので、それを一読していないと理解が苦しい。 論文集の場合、そこに展開されている作家論が魅力的であまり当該の作家を読み込んでいなくとも、作品に読者を誘導するものもあるし、逆にある程度読んでから触れるほうが理解が深まって、作品にもう一度、戻って生かせるものがあると思うが、私から見ると本書は後者。 幸田文は、露伴の影を慕いつつ、その側で、したたかに『自分ならでは』の文学を醸成していった作家で、人間露伴を描写する随筆では、娘「幸田文」である部分を発揮している。けれど、小説においては、父の作品群を尊敬しながらも全く違うものに興味を抱き、描いたひとである。 だから当然いつの時点でかは解らないが、父のしつけの影響という側面からだけでなく、独自の文学性があると論じる方が出てきて当然である。ようやくという感が強い。 時代性を言うなら、父、露伴が難解な思想や「社会」「時代」という外界に題材を探し家父長制の中の男性、社会の中での男性に依拠して作品を構成していたのに対し、文は日常の中から題材を探した。 『崩れ』『流れる』などは取材を礎にした作品だけれどそのきっかけは生活のための住み込みであったり、TV視聴であったり、自分に寄り添ったところを起点にしている。本論文集で筆者が標榜するように、『台所』という自分に任された場所を通して、自分なりの人間考察を作品にした。 戦いとるべきは、他の女流作家のような、台所を出て、家を捨ててのジェンダーからの開放ではなく、家を背景にしての、自己の独自性と内容の質の高さ 誰に対しても理解できるものであることへの鋭さで あったろう。 他の誰が褒めそやそうと、父は遠慮はしない。 まして自分はもっと厳しく作品を見据える。 そういう意味で、生涯幸田文は、家を背にしていた。庇護や七光、愛情や誇りなどというキーワードと別に。自ら声高には言わないが、確実に自己を確立した作家である。本来親離れなどというものは喧伝するものではない。気づけば自分なりの人生を語っていた。それが彼女の実感ではなかったか。
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