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ハームリダクションとは何か 薬物問題に対する、あるひとつの社会的選択
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 中外医学社 |
発売年月日 | 2017/08/15 |
JAN | 9784498129948 |
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ハームリダクションとは何か
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商品レビュー
4.3
3件のお客様レビュー
薬物依存に対しては、「処罰より支援を」。 この考え方自体は目新しくは感じないが、ハームリダクションは、断薬を目指さない。清潔な注射器等の器具を提供し、安全に薬物使用できる施設を用意し、健康的な窃取方法に関する情報を提供する。「ドラッグの使用自体は止まってもいいし止まらなくてもよい...
薬物依存に対しては、「処罰より支援を」。 この考え方自体は目新しくは感じないが、ハームリダクションは、断薬を目指さない。清潔な注射器等の器具を提供し、安全に薬物使用できる施設を用意し、健康的な窃取方法に関する情報を提供する。「ドラッグの使用自体は止まってもいいし止まらなくてもよい」と捉え、使用による被害(健康被害、感染症、失職・孤立・差別等)を減らすことを目的とする。 この考え方が衝撃的でした。例にもれず私も「そんなことしたら余計に薬物使用が増えてしまうのでは?」と考えてしまいました。しかし、カナダでの検証によれば、薬物再使用や新たな使用の顕著な増加はみられず、逮捕率や犯罪率の増加もなかったということです。他方、HIV感染やオーバードーズによる健康被害は顕著な減少があったそうです。 実際にカナダやオーストラリアでは、ハームリダクションに基づいた施設を設置して実践を行っているとのこと。 健康被害の防止・減少もさることながら、薬物を使用してしまった人に対し、「自分は薬物を使ってしまっただめな人間」と思わせない、孤立させないというケアが重要なのだと感じました。もちろん「一回手を出したら終わり、だから絶対手を出すな」という強いメッセージで薬物を使用させないことも大事ですが、薬物使用者を陰に追いやるのみではなく、居場所を提供して「誰も」が暮らしやすい社会を目指す、という社会の在り方もあるのですね。 現状の日本の司法制度の中でどこまで何が出来るのかは未知数ですが、 「薬物依存症の支援とは、決して薬物という”モノ”を規制し、排除することではなく、痛みを抱える”ヒト”の支援である。」 という言葉を頭の隅に置いておきたいと思います。 なお、「厳罰主義をやめると薬物使用が増えるのでは?」という疑問に対しては、「日本では8割以上の人が、法律で禁止する以前に大麻や覚せい剤を使うべきでないと捉えているから大きな問題にはならないだろう。」(15p)という考え方が示されていますが、これは議論の余地がありそうです。 Global Commission on Drug Policyという国際的NGOが作成した図によれば、厳罰ではドラッグ使用はアンダーグラウンドに潜り込み、無規制でも同様に被害が大きくなるが、「規制はしつつ非処罰(+ハームリダクション)」という状態だと社会的・健康的被害が最も少なくなるとのこと。図の根拠はよくわからなかったけど、「禁止しつつ非処罰」という可能性も含め多様なアプローチを考えてもいい、考えるべきではないかという気づきになりました。
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ハームリダクションは消極的な手法ではない、と知ることが大事。これまではアルコール使用障害の患者さんに対する医療者の陰性感情が強かったなぁと反省しています。
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世界の薬物政策は日本の現在と同じように厳罰主義であった。特に米国はニクソン大統領時代に「薬物戦争」と銘打って大規模な取締強化と厳罰化に取り組み、その結果、更に薬物消費量は増加し、薬物に関連する犯罪や健康被害は増加し、闇市場が大きくなったという皮肉な結果を招いたそうだ。そのため欧州...
世界の薬物政策は日本の現在と同じように厳罰主義であった。特に米国はニクソン大統領時代に「薬物戦争」と銘打って大規模な取締強化と厳罰化に取り組み、その結果、更に薬物消費量は増加し、薬物に関連する犯罪や健康被害は増加し、闇市場が大きくなったという皮肉な結果を招いたそうだ。そのため欧州を中心に政策を変え、薬物の少量保持や仕様を許容し、犯罪として排除するのではなく、治療を促し、孤立化させない支援を積極的に進めたそうである。当初は反対意見も多かったが、結果として劇的な成功を収め、薬物使用は健康被害が大幅に減少したそうである。その流れを受け、世界的にも、このハームリダクションの方法が国際的に標準になってきたそうだ。日本ではようやく議論の端緒となっている、今、医療だけでなく、当事者、司法や矯正施設関係など薬物問題に関わる人達が、この問題について書かれた本。私自身、依存性領域に関わりながら、薬物に関しては弱かったのもあり、本書を読んで、目を開かされたが、頭の切り替えができるまでは時間がかかりそうである。今後、この問題を議論するための第一歩となる本と思われ、関連する人には一読をお勧めする。
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