非常出口の音楽

古川日出男(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2017/07/27
• JAN: 9784309025896

商品レビュー

2022/08/06

連想ゲームのような、舞台の一場面のような、エチュードのような短編集。掌篇集。
「サマーレイン」雨と戦う娘と母。戦友、という言葉が良い。
「機内灯が消えた」飛行機の隣で成長する男の子と僕の話。
「ロック・４マイナス0」好きなバンドのスタッフ関係者になった雅弘の独白、バンド解散まで。
「ウォーターメロンガーデン」父親の遺言、西瓜から何が生まれるか考える、姉弟の話。
「非常出口の音楽」大阪梅田、釧路湿原に同時に出現した扉に向かって、翼のはえた人々と、蝦夷鹿が飛び込んで消えた話。

あとがきの「人には、ときに非常出口が必要だ」という文が、とても心に響く。

2021/03/03

初読み作家さんの、13年ぶりの掌篇集。

全体的にSFっぽいというか、
自分の固い頭を必死にほぐしながら読んだ。

にしても
物語の「設定」が独創的で面白かった…

一冊通して、
オチが物足りない…と思ったけれども、
それが逆に良い影響を齎しているものもあった。

好きだったお話は
『とてもとても安全ブーツ』
『殺伐ちゃんが将来なりたいものは気象予言士』
『ロック・４マイナス０』
『アップルヘッド、アップルヘッド』
『ウォーターメロンガーデン』かな。

「殺伐ちゃん～」に関しては、
超越した男女が登場する話が
物凄く好きな私としてはたまらなかった。

心に残ったお話となると
『うはうさぎのうなんですか？
　いいえ、うは裏切りのうですね』に抉られた。

前作の『gift』とは
毛色が違うようなので、それも気になった。
.
① とてもとても安全ブーツ：書き下ろし

② サマーレイン

③ 機内灯が消えた

④ 殺伐ちゃんが将来なりたいものは気象予言士

⑤ ロック・４マイナス０

⑥ ヌードルを奪う猫たち

⑦ やさしい雨の降る森：書き下ろし

⑧ 愛の不在

⑨ シュガー前夜

⑩ 糸とライオン

⑪ 百年草・卒塔婆小町

⑫ 小説よ死ぬなと首相は言った
（ディス・イズ・ア・ポリティカル・フィクション）

⑬ ホッキョクグマを南極へ帰す

⑭ 地上を走る、地中に倒れる、地底を走る

⑮ こんぶカフェの思い出

⑯ アップルヘッド、アップルヘッド

⑰ 盗聴・幽霊篇

⑱ つるつるの小石都市

⑲ ウォーターメロンガーデン

⑳ 卵泥棒おおいに語る

㉑ ヒップホップ・パート３

㉒ うはうさぎのうなんですか？
　 いいえ、うは裏切りのうですね

㉓ グッドモーニンググッドナイト

㉔ ＆ザワークラウト

㉕ 非常出口の音楽

2018/12/26

鋭いエッジと速いテンポの短編集。普段読んでいるなかで、古川日出男がいちばん「言葉という刃物」感がある。抜群の切れ味のものから全力の大振りまで、この方の作品は言葉が武器なのだなあとすごく感じます。
「愛の不在」「糸とライオン」「ウォーターメロンガーデン」「グッドモーニンググッドナイト」が好き。