工学部ヒラノ教授のはじまりの場所 世田谷少年交差点物語

今野浩(著者)

• 販売会社／発売会社: 青土社
• 発売年月日: 2017/06/03
• JAN: 9784791769957

商品レビュー

2018/11/27

今野少年の人間形成が時系列で事細かに追え，家族と学校という後天的環境の影響性の重要さが極めて明快に語られる．そして，当時から（現在も？）変わらず世田谷育ちの優秀な錚々たる人材が，世界を股にかけ現実に活躍していることに驚きを禁じ得ない．このような人間的環境に恵まれたことにより，物事，そして自分自身を冷徹に客観視できる視点を持ち合わせられたことが優秀な人材を形作っていくことが実感される．

2017/11/26

　ヒラノ教授の回想は、学芸大附属世田谷中の同級生、エトイチの家を訪れる場面に始まる。静岡大付属小一番の僕は、名門に合格して上京した。
　その家は、後に日比谷高、東大と進み　昭和後半から各界で活躍する名士となる俊英たちが集う、交差点なのであった。
　中学時代から大学生用テキストを持ち歩き、運動神経も万能な東京エリートたち。お金もなく、地方出身の外様ながらも彼らと盟友の僕は、まさかの日比谷高入試失敗も編入試験で取り返し、再び並んで東大合格を目指して駒を進める。
　断れずに参加した厳しいラグビー部合宿。一日14時間の受験勉強計画。苦難の連続ながら、半世紀以上の続く仲間達との、キラめくような僕の原点がそこにあるのだ。

2017/06/09

十代、社会に適応するための社交、武器を身にまとうためのトレーニングと人脈を作り始める時期の記憶は、年をとっても細部の多くが鮮明だ。どういう時間を誰と過ごしたのか、どんなことを考えて日々勉強机に向かっていたのか、『未来は霧の中』だった気分は、後から振りかえればどんな感じだったのか。そういうことを、思い起こすことによって、自らの一生を総括するプリンシプルが一体何だったのかを確認することになるのだろうか。