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日中漂流 グローバル・パワーはどこへ向かうか 岩波新書1658
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2017/04/01 |
JAN | 9784004316589 |
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商品レビュー
3
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※このレビューにはネタバレを含みます
【197冊目】中国研究者で有名な毛里先生の、前著の続編という位置付け。前著は2006年発刊のもの。それからの10年間で、日中関係は新たな様相を呈するようになっており、これを整理するのが本作の目的とのこと。 たぶん、筆者の頭の中では知識が渦巻いており、読んでいてお情報を大量に読者の頭に流し込もうとしている印象。日中関係の事象面がそれだけ豊富だったということか。ただ、既存の議論の整理を試み、それと同時に、きちんと筆者自身の考え方をその整理の中に位置付けようとする真摯な姿勢がみられ、好感がもてる。 新たに知ったことなどは下記のとおり。 ・毛沢東は「二分論」を唱えていて、これが中国国内における日本の戦争責任について長い間支配的な考え方だった。二分論とは、戦時の日本指導層と一般の日本国民とを区別する考え方で、前者には大戦の責任があるが、後者には無いとするもの。 ・筆者は日中関係を、時系列に沿って概ね4つの区分に分ける。 (1) 日中友好条約が結ばれた1972年以降 →二分論に支えられ、和解ムードが両国を覆った。 (2) 「ハネムーンの15年」と呼ばれる1980年〜1990年代半ば →1979年の天安門事件を受け、その後の改革開放期と重なる時代。日本からの対中国ODAも行われ、「援助する国、される国」という関係となった。 (3) 1990年代半ば〜2010年の「構造変動期」 →日本「戦争は終わった」中国「戦後が始まった」←二分論に対する不満。 →日本=経済の停滞、中国=高度成長期 (4) 2010年〜は、新たな対抗の時代 ・中国専門家の間では、2009年を境に、中国外交が強硬姿勢に転換したとする論調が散見される。 ・中国の外交部は、外交においてイニシアチブを発揮できていない。軍や国営大企業(特に石油)の影響を受けるようになってきている。 ・日中関係について言えば、2005年4月に国内において大規模な抗日デモが発生し、中国国内で日系スーパーが襲撃されるなどの事態に発展した。そして、これを受けて、日中の両国民は、互いのイメージが相当に悪くなるという経験をした。 ・2010年に、尖閣諸島沖で、海保の巡視船と中国漁船が衝突。 ・2012年、日本政府が尖閣諸島を国有化。→中国が「現状の重大な変更である」として反発したが、1992年、中国全人代は「領海及び接続水域法」を採択し、法律で尖閣諸島を自国の領土として規定した。これを指摘し、筆者は、現状の重大な変更について、中国は他国を非難する立場にないと述べている。なお、この法律については、軍部や一部の強硬派の意見が通ったとみられているらしい。 ・筆者は、中国が膨張的な外交を志向しており、また、軍事行動が政治的理由あるいは道義的理由(中越戦争における「懲罰」)によって行われていることを認めている。 ・筆者は、1972年体制は指導者個人の力量や人柄に支えられた外交であったと評価しつつ、日中のチャネルを制度化・理性化し続ける努力が必要であるとする。米中あるいは露中の関係は対話チャネルの制度化がうまくいっているモデルであるとする。
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