食品偽装を科学で見抜く 賢い消費者になるための知恵袋

リチャード・エバーシェッド(著者), ニコラ・テンプル(著者), 守信人(訳者)

• 販売会社／発売会社: 日経BP社
• 発売年月日: 2017/04/01
• JAN: 9784822255152

商品レビュー

2023/08/29

産地の偽装や、「◯◯100％」に安価なまぜもの入れてかさをかせぐような手口から、口にした人に健康被害を与えるものまで、いまも昔も食品偽装は尽きないようだ。「エキストラバージンの嘘と真実」「トマト缶の黒い真実」を読んだときにも思ったけれど、サプライチェーンが高度に発達した現代では食品偽装を見抜くのは簡単ではない。本書はそうした偽装に立ち向かうために考案された科学的／化学的テクニックのあれこれについて詳しいが、そんなこと言われたっていち消費者にできることは限られている。自宅でDNA検査なんかできないんだから、しかるべき検査機関、あるいは流通機関でしっかりとした検査をしてもらって、それを信用するしかない。それでも詐欺師が滅びることはなく、検査機関とのいたちごっこだ。もやもやする。

著者もそう思ったのだろう、400ページ近い本書の最後のほうに、消費者ができる自衛策がいくつか書いてある。それで食品偽装が完全に予防できるわけではないけれど、一理はありそう。

2023/08/12

休みだったり旧友と再開したりで開放的な気分になると、飲食も会話も無防備になる。暴飲暴食だけではなく、人工甘味料の入った酒や添加物まみれの肴も気にしない。少し襟を正し、本著はそうした食に対して、知的武装をしておこうという本。知っているかいないかでは大きく心構えが変わるから、一読の価値あり。

具体的な食品についての解説なので、それを幾つか挙げておく。ハチミツ、ワイン、肉、魚、野菜、牛乳、オリーブオイル、マーガリン。共通しているのは金目当てで偽装が行われ、偽装されたものは、健康を度外視しているという事。だからこそ「高額な食品の偽物」こそ要注意だ。

統計で当たりをつける。例えば、全世界の蜂蜜の年間生産量は120万トンらしいのだが、販売量は遥かに多い。この差は何かというと、コーンシロップやブドウ糖などで薄められているという事実。なんとなく、受け入れつつ認識している話。

ハチミツでもうひとネタ。マヌカハニーとはマヌカ、つまりギョリュウバイの花からだけ蜜を採る蜂によって作られる。世界で1500トンを少し上回る位しか作られないにもかかわらず、9070トンの需要、つまり世界では生産量の5倍以上も売られている。これは、明らかな不正、原材料の偽装だ。

中国からアメリカに輸入される蜂蜜は、殺虫剤と抗生物質が残留している恐れがあるため、すべて米国で医学的テストを受けなければならない。しかし別の国を通じて洗浄され中国産と書いていなければテストを回避できる。これは、産地偽装のロンダリング。また中国からの蜂蜜は徹底的に濾過されているので蜂蜜の中に花粉が全く残っていない。花粉を含まないと原産地テストは難しくなる。コストコなどのスーパーで購入した蜂蜜の76%は花粉を全く含んでいなかったらしい。

油についても少しだけ。植物油の泡止め成分ジメチルポリシロキサンは、工業用化学物質の一つで豊胸手術に使われるシリコーン油としてよく知られる。マクドナルドは、少量のジメチルポリシロキサンを使用している事を公言。調理中の油の飛散を抑える効果があるという。マッククルーの火傷防止に貢献していると思いながら、資本家に感謝し、不健康なジャンクを食らうのも乙である。

他の食品もこんな感じで、読んで損はしない。ただ、世の中に疑心暗鬼になり、食が少し嫌になりそうだが、そこは自己責任で。

2017/05/21

ひたすら長いし、実用的なアドバイスがあるわけではないけど面白い。科学で偽装を見抜く最前線。意外と偽装されても人は死なないというのと、いたちごっこが進んだ結果、見抜く前よりマシになってるとは言い難いことが印象的。