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聖愚者ラヴル
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 作品社 |
発売年月日 | 2016/12/15 |
JAN | 9784861826092 |
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
あとがきによると作者ヴォドラスキンはルーシ時代の聖人伝を意識して本作を書いたそうで、「16世紀ロシアに生まれていたら良い作家になっていた自信があります」というようなことを言っている。 確かに、本作はアルセーニーという医療聖人(っぽい人物)かつ聖愚者の聖人伝という風に読める。とはい...
あとがきによると作者ヴォドラスキンはルーシ時代の聖人伝を意識して本作を書いたそうで、「16世紀ロシアに生まれていたら良い作家になっていた自信があります」というようなことを言っている。 確かに、本作はアルセーニーという医療聖人(っぽい人物)かつ聖愚者の聖人伝という風に読める。とはいえ、本物の聖人伝なら修道院入りする前に女性と暮らしていて、その女性とどう結ばれたかなどということは書かれないだろうけど。聖愚者とは神のために人から愚か者と蔑まれるような生活を送る世捨て人で、ルーシならびにロシアでは聖愚者を大変敬う伝統がある。 高い医療技術、というより神から発する治療の恩恵を患者に「取り次ぐ」能力を持つアルセーニーが救えたはずなのに救えなかった数少ない人物が若かりし頃に同棲していたウスチーナである。ウスチーナの要求通りにきちんと産婆に見せていれば…。だから、話の最後で村人に袋叩きにされた未婚で身重の少女を無事に助けられたのはアルセーニーにとって最も重要な救いだったのかもしれない。 プスコフ(確か)からエルサレムまでの巡礼の途上では、キーウ、ジェシェフなど最近のニュースでよく目にする地名が出てくる。物語自体、場面と直接関係のない未来や、登場人物の預かり知らぬ過去を急に登場させて(ロシア文学あるある?)、「時」という概念を超越するような語り方をしているので、余計に最近の東欧情勢を重ね合わせながら読んでしまう。 一つ理解できなかったのはアルセーニーが最後に名乗った名前がなぜラヴルだったのかということ。アルセーニーは4つの名前を名乗るけど、そのうちウスチンとこのラヴルが本名と頭文字の一致しない名前である。ウスチンはウスチーナ由来だからいいとして、ラヴルは?同名の聖人に何か種明かしのヒントがあったりするのかな?あと10年くらいしてもう少しルーシへの理解が深まったら、また読んでみたい本。
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重厚であるのに軽やかで可笑しく、永遠と刹那の時を超える物語。 思いがけず一緒に旅し、涙し、笑い、キリスト者でもないのに祈り、物語に寄り添えた幸福な体験だった。
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