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抱擁家族 講談社文芸文庫ワイド
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抱擁家族 講談社文芸文庫ワイド

小島信夫(著者)

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抱擁家族 講談社文芸文庫ワイド

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 2016/12/12
JAN 9784062955102

抱擁家族

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商品レビュー

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2023/01/11

 最近夕飯どきにAbemaにて期間限定配信中の「こち亀」を観ている。こち亀は主人公の両津があらゆるリアリティを、笑劇であるという作品そのものの前提に担保され破壊していく。そもそも両津が警官という、戒厳でなければならぬはずの職業についている事が逆説として笑劇の破壊度を上げている。だ...

 最近夕飯どきにAbemaにて期間限定配信中の「こち亀」を観ている。こち亀は主人公の両津があらゆるリアリティを、笑劇であるという作品そのものの前提に担保され破壊していく。そもそも両津が警官という、戒厳でなければならぬはずの職業についている事が逆説として笑劇の破壊度を上げている。だが重要なのは両津というのは、彼の本能に従順に生きているつまりはふざけて何かトラブルを起こしたりするのではなくて彼の中のリアリティに沿って行動しているということだ。  「抱擁家族」を読んでいて考えたのは、ほとんどこの作品および主人公の俊介というのは(逆・こち亀)というような状態なんじゃないかということだ。追い詰められていく俊介は完全に狂気に陥っている状態で、しかしその狂気をして笑劇的に振る舞おうともがいている。支離滅裂で無軌道な彼の行動は、たとえばそれがギャグ漫画というフレームの中にあればそれこそ両津のようにコミカルに映るだろうが、小説の中においてはこの小説自体が圧倒的に悲劇であるという前提によって笑劇化されることが許されない。

Posted by ブクログ

2021/04/25

 翻訳家兼外国語講師の夫、専業主婦の妻、長男、長女という四人家族の三輪家に、アメリカ人兵士のジョージが居候することになる。ある夜、妻はジョージと一夜を共にしてしまう。その悲劇と屈辱を乗り越えようと夫が必死になればなるほど、家族は崩壊の一途を辿る。  「戦後小説の金字塔」という裏...

 翻訳家兼外国語講師の夫、専業主婦の妻、長男、長女という四人家族の三輪家に、アメリカ人兵士のジョージが居候することになる。ある夜、妻はジョージと一夜を共にしてしまう。その悲劇と屈辱を乗り越えようと夫が必死になればなるほど、家族は崩壊の一途を辿る。  「戦後小説の金字塔」という裏表紙の文言に惹かれ図書館で借りた。昭和三十六年に途中まで書かれ、四年後に完成したという小説。私は昭和六十二年生まれ・・・まさにタイムスリップだった!生活のあり方(亭主関白、デリカシーのない強気な医者)、語彙(外人、キチガイ、支那など普通に出てくる)がなかなか想像を絶していて、日頃ジェンダー問題と差別用語に関しては比較的カリカリしている私も、何これウケる〜異世界〜くらいのテンションで読んだ。何がおもしろいのか、どういう結末へ向かっているのか、読んでいて全くわからない。物事に対する登場人物の感情の変遷も、泣いたり笑ったり、睨んだり媚びたり、なんでそこでそういう反応になる?と理解ができない。なんだかもうSF小説を読んでいるような気分だった。  末尾の解説が全ての種明かしをしてくれた。 --- 「倫理的支柱」の喪失とは、本来深刻な、悲劇的な事態だ。そして実際、敗戦の荒廃、その空白への西洋、特にアメリカの文物、制度、思想の侵入によって、日本人の「倫理的支柱」が一度はへし折れたことは、誰しもが認めるところであろう。しかも、その西洋の思想や制度はわが国では容易に根づかず、物質文明の流入と相俟って、むしろ日本人の心の拠り所、いわゆる自己本体(アイデンティティ)の喪失と、その結果としての混沌をもたらしたと言わなければならない。- p.275 ---  なるほどと思った。ジョージが出現するまでは、三輪家はごく一般的な、日本の「普通の」家庭だった。英語が堪能な日本人がまださほど多くなかった当時、翻訳家の夫はは自信に溢れ、妻も子供を二人産み、いわゆる日本的な価値観の中で満足していた。そこに突如としてジョージという、それまで三輪家には存在しなかったアメリカ的な価値観が流れ込んでくる。それまで当然と思っていたものが崩れる。亭主関白は古い。女性も性に対して積極的で良い。自由で新しい価値観は、妻の目に最初こそ魅力的に映る。しかし長く日本で生きてきた彼女は、従来の価値観を捨てすこともできない。夫は、新しい家を買ったり、家の周りに塀を建てようとしたり(こういう一つ一つのアイディアは実に理解に苦しむ!)、なんとか夫婦関係を立て直そうとするが、全てが徒労に終わり、精神を病んでいく。  つまるところ、この小説は、この夫婦の生き方がどうだとか、妻とジョージとの情事(あっ・・・)がどうだとか、そういう次元の物語ではなく、戦後、他国から新しい価値観がどんどん流れ込んでくる中で、既存の価値観との間で板挟みになって右往左往する日本人の姿を描いた笑劇なのだ、と理解した。こんな時代があったのね。なるほど勉強になりました。でも解説がなかったら、なんじゃこりゃ?で終わってしまうところでした。

Posted by ブクログ

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