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幼年の色、人生の色
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幼年の色、人生の色

長田弘(著者)

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幼年の色、人生の色

定価 ¥2,640

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2016/11/01
JAN 9784622085577

幼年の色、人生の色

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商品レビュー

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2019/04/10

なんでもない日々に人生の安寧や永遠を見出す。永遠が一瞬になり、一瞬が永遠になる。この人の書くものは、つまるところこれに尽きるとおもう。 一見代わり映えのない日常の中で人生の恩寵というべき光がわずかに射し込む。その瞬間を長田弘の目は逃さない。その光を記憶というフィルムにゆっくりと焼...

なんでもない日々に人生の安寧や永遠を見出す。永遠が一瞬になり、一瞬が永遠になる。この人の書くものは、つまるところこれに尽きるとおもう。 一見代わり映えのない日常の中で人生の恩寵というべき光がわずかに射し込む。その瞬間を長田弘の目は逃さない。その光を記憶というフィルムにゆっくりと焼き付け、照らし出された対象が浮かび上がってくる時をじっと待つのだ。 そんな文章の魔術師でもある詩人による後期〜晩年にかけての単行本未収録エッセイの中から、選りすぐりの自選作が収められている。まさにRetrospectiveという言葉がぴったりだろう。 一つのエッセイを読むのに大した時間は必要ない。数分かかれば読み終えてしまうものが大半だろう。しかし、読み終えてみるとまた最初から読み返してみたくなる。そんな魔力を持ったエッセイが並んでいる。まずは本書を手に取り、冒頭の一遍を読んでみてほしい。 山ほどある引用したい文から幾つかを選び載せてみることにする。本の冒頭付近に置かれた、美しい山間の温泉旅館に療養に行った過去を回顧するエッセイである。 「温泉の朝は霧とともにはじまり、昼は本をもって、外に出て、木漏れ日のなかで、川の音とともに過ごす。気がつくと、夕暮れがそこまできている。静けさが降ってくるような夜がきて、漆黒の闇につつまれると、冷気がひろがる。葉の音。枝の音。風の音。夜には夜の音がした。しじまの音を聴いたのも、そのときがはじめてだった。 そのとき読んだ本は、角川文庫版の中島敦『李陵・弟子・名人傅』だ。小さな本だが、人間の偉さは、そこにその人間が存在するというだけで充分なのだとする、作家の生き方の姿勢が思いきり詰まっていた。心を掴まれた。文章は節義なのだと思い知った。」『むかし、霧積温泉で』 その他にも 「過ぎた日をふりかえると、音の記憶はあっても、記憶には音がないということに気づく。音ではないのだ。記憶の力は、そのときこころの置き場所となった沈黙だけを、いま、ここにありありと取りだす。」 「感情ではないと思う。過ぎてゆく時間は、そのときそのときの感情を消し去るが、そのときそのときの記憶に滲んでいる色あいは、いつまでものこる。そのとき何を考えていたか覚えていなくとも、そのときそのときじぶんをつつんでいた時間の色あいは、後になればなるほど、じぶん自身の人生の色として、記憶のなかにますますあざやかになる。世界が色として現われてのこるのが、わたしたちが人生とよぶものの相ではないのだろうか。」 「 雨にけぶるブルーグラスの州ケンタッキーの、静かでうつくしい街レキシントンのショッピング・モールで、金いろにかがやいてゆっくりと回ってゆくメリー・ゴー・ラウンドを見ていたとき、ふっと抱いた一瞬の思いを、いまもまだ鮮明に覚えている。人生とよばれるものは、一周するたびに一つずつ歳をとってゆく回転木馬のようなものだと。 わたしたちは、じぶんの木馬に跨ったまま、歳月を回ってゆく子どもなのだ。」 「 話したこともない。親しくしたこともない。何も知るところがない。それでも、あなたがわたしのなかにのこしていったのは、人生の特別な一人の記憶だ。詩を書くことは、それが誰だろうと、あなたとしか言うことのできない、人生の特別な一人に宛てて、わたしのことばを差しだすことである。」

Posted by ブクログ

2017/01/15

図書館の新刊コーナーでひかれて手に取った. 等身大のことばから,長田さんの輪郭が,2Bのえんぴつがきのスケッチのように濃く,でもやわらかい線で浮かび上がってくる.そんな文章にあふれている. ほとんどすべてのアメリカの州を,ロードトリップでおとずれたことがある長田さん.旅につい...

図書館の新刊コーナーでひかれて手に取った. 等身大のことばから,長田さんの輪郭が,2Bのえんぴつがきのスケッチのように濃く,でもやわらかい線で浮かび上がってくる.そんな文章にあふれている. ほとんどすべてのアメリカの州を,ロードトリップでおとずれたことがある長田さん.旅について文章は,エピソードのひとつひとつが,詩のように想像をかきたてる.

Posted by ブクログ

2016/12/13

裏表紙の紹介につきる。「最後に編んだ自選エッセイ集。…等身大の長田弘をよく伝える小さな一冊。」触れられた本、音楽を読んだり聴いたりしていなくても、著者の声がまっすぐこころに届き、励まされる。「福島、冬ざれの街で」「じゃあね」の2編が本の最後におかれている。旅立ちを覚悟のうえで編ま...

裏表紙の紹介につきる。「最後に編んだ自選エッセイ集。…等身大の長田弘をよく伝える小さな一冊。」触れられた本、音楽を読んだり聴いたりしていなくても、著者の声がまっすぐこころに届き、励まされる。「福島、冬ざれの街で」「じゃあね」の2編が本の最後におかれている。旅立ちを覚悟のうえで編まれたLater Worksのようだ。大切な一冊になった。兄貴有り難う。

Posted by ブクログ

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