本番5秒前！(1) REX C

美川べるの(著者)

• 販売会社／発売会社: 一迅社
• 発売年月日: 2016/09/27
• JAN: 9784758066198

商品レビュー

2016/11/16

真っ先にぶっちゃけるが、私は美川先生の作品は、ストーリー系より四コマ漫画の方が好きだ。美川先生らしさが、四コマに凝縮されている、と思う
その上で、この『本番５秒前！』には大笑いさせられた
ついにゃ、報道番組まで、美川先生の餌食になったか、ってのが読む以前に、本屋で表紙を見た際、思ったコト
打ち切りを喰らうくらい面白すぎた、『ＮＥＷＳ×ｉｔ』（くろは）に劣らぬくらい、報道番組を過激なネタでおちょくっている。さすがに、くろは先生とはキャリアも違うから、その辺りの限界を見極める能力を美川先生は持っている、と信じたいが、それでブレーキをかけないのが美川先生だからな
類は友を呼ぶじゃないけど、各作品の担当編集さんも、美川先生を任されるだけあって変人の類で、美川先生がアクセルに乗せている足を踏みつけて、よりスピードを上げさせるトコがあるし、不安だ。この元ＴＶ番組スタッフの経歴を持つアダチさんは、マトモだといいけど
そんな不安を脇に置いて、読んだ感想を語るが、正直なトコ、まだ笑い過ぎて、いつも以上に支離滅裂になりかねない
それくらいの破壊力があるギャグマンガだ
ギャグマンガの絶対条件を、モヤモヤした気持ちを笑いで吹っ飛ばせるモノ、とするのなら、この『本番５秒前！』は十二分に満たしている
読む前は、何かで悩んでいたはずだが、読んだら、どうでもよくなっていた
一回目の読了で受けたダメージが落ち着いた頃、しみじみと思ったのは、美川先生の引き出しの多さ
描きたいモノを描く、じゃ面白い作品にならないのが、マンガの醍醐味
美川先生は、「描きたい」って欲望を満たすための努力は惜しまない人なんだろう
その努力が、すぐに結びつくわけじゃない、と経験則で知っているからこそ、情報収集を怠らない。その結果、後の作品作りで役立つモノを保管しておく引き出しが、こうも増えるんだろう
きっと、美川先生は、多くのニュース番組を見て研究し、この『本番５秒前！』を、このレベルの作品まで仕上げたに違いない
美川先生の作品を読んだことがない漫画読みは、表紙などの絵柄や、裏の作品紹介を見て、勢いだけで作品を作る天才肌、と思うだろう
絵柄だけでなく、ストーリーとキャラにも勢いがあるのは、間違いじゃないが、直感だけ漫画を描いている訳じゃないな、と私は感じている
このシーンで読み手を笑わせよう、このキャラクターは絶対にツボる、とち密な計算とシミュレーションを重ねているようにも思えるのは私だけだろうか？
無理してテンションを高めているのではなく、自分の作品で楽しめるからこそ、ハイテンションになれるのだ
自分の作品で笑えないようじゃ、ギャグ漫画じゃ食ってはいけないってコトを教えてくれるのが美川先生だ
しっかし、ホント、いつにも増して、素人の夢や憧れをぶっ壊す、イイ意味で酷ぇギャグだな
こんな番組作り、ありえない、と頭じゃ判っているのだが、美川先生の笑いに引っ張られていると、「まさか」って疑心暗鬼が生じてくるから不思議だ
また、ヒロイン（？）である女子アナ・松沢さんのツッコミが、読み手の心を見事に代弁してくれているトコもさすがだ
ギャグってのは、ボケよりも質が高いツッコミがあってこそ、だろう
どの回もミカベルワールド全開で迷子は必至だが、私的に推したいのは、第一話だ。掴みがバッチリどころか、いきなり、読み手を振り落としに来てるあたり、美川先生だな、と感じる。新作を読み度に、他の作品を読んで、ある程度の耐性と予測能力が身に備わっていて良かった、と思っちゃう
この台詞を引用に選んだのは、テレビ業界云々より、世界そのものの真理を見てしまいそうになったから。この作品に限った事じゃないが、美川先生の迷言って一周じゃ足りず、三周でもまだ足りず、十周くらいすると、いつしか納得してしまっているから怖ぇ・・・もしかすっと、先生も、私らも電波さんから出ているモノを浴び過ぎただろうか