少年聖女

鹿島田真希(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2016/08/30
• JAN: 9784309025001

商品レビュー

2024/08/18

性的描写の多い本は苦手だったが、苦手にもチャレンジせねばの一心で読み進めた。

多分聖者云々の演説はあまり理解出来ていないと思う。
ただ、その場の欲求を満たすような生活を送る人に対して少し憐れみだったり侮蔑の目を向けてしまい、自分はこうなりたくないと思ってしまいがちだが、生物的欲求に回帰する生き方に誇りを持つ登場人物達を、否定は出来ないと思った。

性的描写が苦手な理由に、潔癖な部分があるのだと思う。読んだと言いつつ直接的な描写は少し読み飛ばしてしまっているのだが、その発想が生物的に健康なのかを自問自答するきっかけとなる作品だった。

また不幸な生い立ちの人達と生活する、救うことの難しさも痛感した。タマのどうせすぐに見捨てられる、それが怖くてどんどん自傷に走ってしまう姿は心苦しく、現実の貧困層の生活に対してつい抱いていた疑問を見つめ直さなければと思った。

2023/09/21

最初に読んだのは随分前。号泣しながら。こんなに人に寄り添う文章を描ける方なんているんだと驚きとともに。

2回目の読了。
難解だった。

2022/04/03

”最も汚辱に塗れた俗なるものが一転して聖なるものと化す”というのは古典以来の一つの文学などにおけるテーマであるが、そのテーマを現代において描こうとした労作・・・と言えないこともない。

女でありながら男性と偽ってゲイバーで過激なショーを演じるタマと、偶然にきっかけから彼女に魅せられ結婚することになる武史という2人の関係を軸に、俗なるタマが武史の目にとって徐々に聖者へと転化していく様子を描く小説。そのテーマ自身は頭では理解できるのだが、なぜそのような転化が発生するのか、という理屈が正直伝わってこず、作品に入り込めなかった感が強い。

こういうアナーキーなテーマを描こうとする心意気は非常に買うし、決して面白くないわけではないのだが、これが傑作と言えるかというとそれは違い、もっと別の作品を読んでみたい、という気はわずかにさせられる。