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コロンビアの素顔
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | かまくら春秋社 |
発売年月日 | 2016/04/01 |
JAN | 9784774006796 |
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コロンビアの素顔
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元駐コロンビア日本国大使によるコロンビアの紹介書。同著者の前著『ビオレンシアの政治社会史――若き国コロンビアの悪魔払い』(アジア経済研究所、2011年)とかなり内容が重複しているが、本書の方が頁数が少なく(本書は195頁、前著は299頁)、内容も前著よりも込み入っていないため、ま...
元駐コロンビア日本国大使によるコロンビアの紹介書。同著者の前著『ビオレンシアの政治社会史――若き国コロンビアの悪魔払い』(アジア経済研究所、2011年)とかなり内容が重複しているが、本書の方が頁数が少なく(本書は195頁、前著は299頁)、内容も前著よりも込み入っていないため、まずはこちらを先に読んでから『ビオレンシアの政治社会史』を読めば理解しやすいと感じた。なお、本書にあって前著にない部分は経済について論じた部分で、第四章のガビリア政権(任1990年-1994年、自由党)の経済改革と、第五章のウリベ政権(任2002年-2010年、自由党離脱派)の経済改革について論じた部分が特に目新しかった。 コロンビアの隣国ベネズエラでは1980年代~1990年代にかけて経済不振が続き、ベネズエラの支配階級に見切りをつけた有権者は1999年にチャベス大統領の革命政権を誕生させたが、チャベスとその後継者のマドゥロ政権がどう考えても上手く行っていないことが明らかなのに対し、コロンビアの支配階級は社会問題こそ解決する気力はないものの経済運営には成功している。寺澤氏が折に触れて強調するように、コロンビアは内戦が続く中でも経済成長には成功しているのである。この問題について、本書から寺澤氏の見解をまとめると以下のようになる。 “ 一般的にラテンアメリカ諸国における農地保有状況は、概ね五パーセントの大土地所有者が八五パーセントの農地を保有するという構造になっている。コロンビアにおいても、《表3》のとおり、このような傾向が見られ、二〇〇〇年では、一・三パーセントの大土地所有者(二〇〇ヘクタール以上)が六八・三パーセントの農地を保有している。”(本書84頁より引用) “ このように、ゲリラは、当初、農民保護のための運動を掲げて勢力を拡大してきたが、創設当初の幹部が戦死したことにより、次第にその思想的使命が失われ、途中から反政府武装勢力として革命を実現することのみが自己目的化してきた。具体的には、戦力を強化するため農民を強制的に徴兵したり、資金調達のためコカの栽培に農民を使役したりするようになり、今では農民の支持を完全に失っている。しかし、格差社会と、貧困の社会構造は、一時、ゲリラ組織が蒔いた種の発芽の温床であったことは事実であり、一九八〇年代から二〇〇〇年代初め頃までのコロンビアの治安悪化の一つの原因であった。”(本書94頁より引用) “ 《図7》を見ると、二〇世紀のコロンビアの平均成長率は五パーセントであるが、一九八〇年から二〇〇〇年までの二〇年間の平均成長率は三パーセントに低下している。また、前出の《図3》の生産性も他のラテンアメリカ諸国に約五年遅れて一九八〇年をピークに低下し始めている。すなわち、コロンビアも他のラテンアメリカ諸国と同様に、政府の介入と保護政策により生産性の低下と競争力の喪失という病弊を患った。”(本書114頁より引用) と、上記の引用で概ねコロンビアの抱える問題については明らかになったと思うが、それでも域内ではかなり高度な経済成長を実現しているのは流石である。前著でも本書でも、寺澤氏はコロンビア経済の特徴として、ポピュリズム政権が誕生しなかったことを高く評価している(170-177頁)。私としては1948年にポピュリストだった自由党大統領候補のガイタンが暗殺されず、選挙で勝利して一定のポピュリズム改革を実現していれば、ボゴタ暴動(ボゴタソ)もその後の内戦も起きなかったと思うので、政治的暗殺でポピュリストの登場を防いできたコロンビア政治のあり方は必ずしも褒められたものではないと考えている。しかしながら、隣国ベネズエラの支配階級が経済運営に失敗してチャベスとマドゥロの両ポピュリズム政権を誕生させ、そして両政権とも失敗していることを思うに、今後もコロンビアの支配階級が恐らく今後も1.3%の大土地所有者が68.3%の農地を所有しているという構造的な問題を解決する気は持たないであろうことは承知ながらも、そこそこ上手くやっているということは認めざるを得ない。
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