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高坂正堯と戦後日本
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2016/05/01 |
JAN | 9784120047404 |
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元京大教授で稀代の国際政治学者高坂正堯が没して二十年になる。本書の第一部は高坂の広範な業績を多角的に分析したものだが、中でも五百旗頭眞、待鳥聡、中西寛三氏の論稿は、単なる身贔屓ではなく、独自の切り口で高坂に迫っており読み応えがある。第二部は師である猪木正道の令息猪木武徳氏、若き日...
元京大教授で稀代の国際政治学者高坂正堯が没して二十年になる。本書の第一部は高坂の広範な業績を多角的に分析したものだが、中でも五百旗頭眞、待鳥聡、中西寛三氏の論稿は、単なる身贔屓ではなく、独自の切り口で高坂に迫っており読み応えがある。第二部は師である猪木正道の令息猪木武徳氏、若き日にハーバードで共に学んだ入江昭氏、サンデー・プロジェクトの「相方」田原総一朗氏が高坂の人物像にスポットを当てており、知られざるエピソードが興味深い。高坂の数々の名著を久し振りにじっくり読み返したくなる好論集だ。 高坂は吉田茂が打ち出し、戦後日本の保守本流の基軸となった対米協調、軽武装、経済優先主義を最も早い段階で肯定的に評価した一人だが、同時にその限界を誰より意識してもいた。70年代初頭に「道義なき平和国家」を批判し、経済偏重の日本に「生命以上の価値」に殉ずる「真実のとき」が存在しないと喝破していたし、戦後日本の精神的頽廃への苛立ちは、湾岸戦争以降晩年にかけてより強くなったという。猪木門下の後輩五百旗頭氏は戦後日本の歩みに沿って高坂の業績を辿っているが、現実主義者で軽妙洒脱な風の高坂が普段あまり見せなかった道義的な側面に光を当てており、五百旗頭氏らしい味わい深い文章である。 待鳥氏の専門は国際政治学ではないが、高坂の晩年に京大の村松岐夫のもとでアメリカ仕込みの実証主義的政治学を学んでいる。高坂はアカデミックな研究者としてより、むしろ深い歴史的教養を湛えたヨーロッパ型の知識人としての評価が高いが、待鳥氏は若き日の高坂が当時のアメリカ政治学の方法論を自家薬籠中のものとし、後の研究・言論活動の随所にそれが活かされていると主張している。社会科学者としての高坂を正面から論じた貴重な論稿である。 そして本書の白眉は高坂の国際政治学講座の後継者中西氏の力作である。キッシンジャーやケナンなどの古典的リアリストとの異同、ドイツ歴史学派やカント研究者である父正顕の影響、三島由紀夫との対比など、思想史的アプローチを取り入れ、従来の高坂論の土俵を大きく拡げており、中西氏の懐の深さを感じさせる。高坂に比して堅実で地味な印象のある中西氏だが、氏の意外な一面を見たような気がする。
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60年代は佐藤首相の御用学者と受けとめていた国際政治学者の高坂氏。その後は文明論・歴史の研究でも活躍しておられる姿が結びつかなった。高坂の助手時代の卒論が「ウィーン会議」であり、関心の中心は欧州、そして大国の没落していく姿、特に英国の興亡史にあったとは意外だった。歴史学者といって...
60年代は佐藤首相の御用学者と受けとめていた国際政治学者の高坂氏。その後は文明論・歴史の研究でも活躍しておられる姿が結びつかなった。高坂の助手時代の卒論が「ウィーン会議」であり、関心の中心は欧州、そして大国の没落していく姿、特に英国の興亡史にあったとは意外だった。歴史学者といっても良い姿だ。国際政治学を研究していくうえでは歴史は重要であり、いまや日米の戦前戦後の外交史は立派な学問領域なのだろう。中国のここまでの台頭を予想できない時代に日中国交回復を支持していたという先見性、「日本は臆病な巨人でしかない」と69年に書いている高坂という人の凄さを痛感した。60年代前半にハーバードでの丸山眞男、入江昭らとの交友、議論の数々が紹介されている事が素晴らしい時代だったと感じる。「丸山さんは戦前日本思想でいい仕事をされたが、あの人は文学に行くべきやったな」と高坂氏が語っていたとの猪木武徳氏の回想が面白い!右翼学者だと嘯いていた私自身の若い頃の浅薄さが恥ずかしい。この人の歴史上の知見に基づいたリアリズムに立ったしっかりとした主張だったのだ。「日本人は与えられた問題を解くことに一生懸命だった。」しかし、自発的に問題を設定する能力を持っているかと言うことを提示されたとの猪木氏の言葉も肝に銘じたい。
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