不平等との闘い ルソーからピケティまで 文春新書1078

稲葉振一郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 文藝春秋
• 発売年月日: 2016/05/20
• JAN: 9784166610785

商品レビュー

2022/04/28

トマ・ピケティの『21世紀の資本』（2014年、みすず書房）が日本でも広く話題となった状況のなかで刊行された数多くの本のひとつですが、著者が「あとがき」で述べているように、ピケティの解説書ではなく「不平等との戦い」というテーマの経済学史における変遷をたどり、このテーマが現代においてあらためてとりあげられることになった文脈を明らかにしている本です。

本書ではまず、ルソーとスミスの対立にまでさかのぼり、ルソーが私的所有制度のもとでの分業が不平等を生み出すことを問題視したのに対して、スミスは市場メカニズムを通じて全体としての豊かさが実現できることに目を向けたことが説明されます。つづいて、マルクス経済学を瞥見し、新古典派経済学の誕生へと、経済学史のメイン・ストリームが解説されます。とりわけ、労働者と資本家の対立というマルクス経済学の基本的な構図が、新古典派経済学においては解消され、不平等というテーマも経済学者たちの主要な関心からしりぞいていった経過が論じられます。その後、現代の経済学において不平等をめぐる問題にふたたび注目が集まった経緯が解説され、ピケティの著書がそうした大きな文脈のなかでどのような位置づけをもつのかということが論じられています。

2017/12/21

ルソーとスミスからピケティまで、経済学における不平等に関する論述を俯瞰した一冊。それに対して、ご本人はどのような意見を持っているのか不明なのが、日本の学問の不幸です。

2017/12/18

理解に多くの前提を必要とする。どこに定点を見出すかによってスタンスに違いが出てくる。語られること以外の要素が大きな問題であるよう。その問題は底が抜けているので語られない気がする。処方を見出して共有するの難しそうだというのが率直な感想。