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ナイチンゲール(上) 小学館文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 小学館 |
発売年月日 | 2016/05/07 |
JAN | 9784094062038 |
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ナイチンゲール(上)
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商品レビュー
2
1件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アメリカの本屋大賞1位みたいなもんでしょうか?(よく知りませんが)。 「Goodreader」とかの2015年ベスト1、NYタイムズ・ベストセラーに1年以上ランクイン等々の煽りが賑やかだ。 第2次世界大戦、ナチスの凶行、フランスのレジスタンスの地下組織。こんな時代背景と設定から俄然フレデリック・フォーサイスかトム・クランシーのような軍事的、諜報戦的な複層的展開を期待すると肩透かしを喰らう。 また洋書だということで、レンガをひとつひとつ積み重ねていくかのようなジョン・ル・カレ的な緻密な情景、時代描写があるのかと思えば重厚さはほとんどない。最初にものすごい違和感を感じながら読み始めるが、マンガ然としたイラストで装丁されていることを思い出すと、なんとなく腑に落ちるものがあった。 第二次大戦でドイツに屈服したフランスを舞台に、ヴィアンヌとイザベルという性格も行動パターンも異なる姉妹が、それぞれの立場と矜持で戦争という狂気に立ち向かう様を銃後の生活を中心に描き出す物語。姉ヴィアンヌの元にはドイツが侵攻、夫が出征中の家にはドイツ軍大尉が駐屯、家族を守るため屈辱的な仕打ちに耐え続ける。ハネッ返りの妹イザベルはドイツ軍に刃向うためレジスタンス組織に身を投じ連合軍航空兵を国外へ逃亡させる秘密任務を遂行していくようになる。 なのに、政治や軍事的背景はよく見えてこない。レジスタンスの組織の資金源は誰だとか、指揮系統とか全貌も多くは語られない。ラジオや他の通信手段をナチに没収されたフランス市民と同じような立場で読み進まなければならない不自由さを感じる。 これが、これまで慣れ親しんだ軍事スパイもの、冷戦もの小説と異なりジワジワ違和感を感じる部分。著者の筆力のなさかと思ったが、「銃後」の気分を味わせる企みだとしたら見事なものだ。 ただ、近年見たナチス絡みの映画『黄金のアデリーヌ』の逃亡劇、『サラの鍵』の競輪場の描写、『サウルの息子』の強制収容所のシーン、そうした映像の既視体験が無ければ、この著者の文章力だけで事態を想像するのは相当困難だったのではなかろうか。 逆に、そうした事実に即した説明がばっさり省かれていた分、サクサクと読みやすかったのはありがたかったが、あまりにも情報不足というか、描き込みが少ない。慣れの問題もあるのかもしれないが、それぞれのシーンが背景を伴って浮かんでこないのだ。 偶然、「サラの鍵」を想い出したが、著者が巻末で謝辞を述べている相手タチアナ・ド・ロネは『サラの鍵』の原作者だ。訳者あとがきで、そのことが追記されており、まさにヴェロディヴ事件等の描写では助言をもらったとある(どうりで、その映画のシーンとダブるはず)。 さらにネタバレ的であるが、エンディングのオチのひとつが『サラの鍵』の仕掛けと似ていて興ざめる。執筆協力してくれたタチアナ・ド・ロネへのオマージュだったか。にしても容易に想像できたのでイマイチ。 そうした仕込みが稚拙な点がこの作品の難点。 父親の正体も安易、過去を振り返る現在の主人公、その息子の関係も、伏線を張ったんだか張ってないんだか、その手の技巧に長けてない点が散見される(敢えて複雑にしてないのかもしれないが)。 そもそも、冒頭の1章と最終章は繋がっているのか?下巻巻頭の「登場人物紹介」に、アメリカに住む老女として名を記しているのはいいのか? オチとして成り立っているのか? なんだか釈然としない点が多いのだが、なにか読み飛ばしたか勘違いしたか? いずれにせよ、あまり練られていないプロップと仕掛け、平易な内容が、最終的にイラスト然とした装丁になったのかな、と納得している。 悪くない話ではある。「銃後」に置かれた女性の立場から見た戦争であるなら、最後に主人公が語る言葉に象徴されるように見事に描かれていたと思う。 「女は胸に秘めて生きる。わたしたちにとって、あれは陰の戦争だった。終わったとき、女のためのパレードはなかった。勲章もなく、歴史書に記されることもなかった。戦時中、女たちはやるべきことをやり、戦争が終われば、残ったものを掻き集めて生活を立て直した。」 そして外の、世界の事情が多く語られないままの描写も、それが作者の意図したことかはわからないが、奏功している感はある。 が、レビューの点数が高く、1年もベストセラーってのは、決して悪いことではないのだけど、「読みやすい」という評価に過ぎないのかな、という印象。 マンガのノベライズ版とまでは言わないが、本読みが読む作品としてはイマイチであった。
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