呪走！邪神列車砲 クトゥルー・ミュトス・ファイルズ

林譲治(著者)

• 販売会社／発売会社: 創土社
• 発売年月日: 2016/04/25
• JAN: 9784798830339

商品レビュー

2016/05/05

列車砲。歴史上いっときしか花咲かなかった感のある、ある意味異形の兵器と言えよう。
これをクトゥルーものにもってくるとはさすが林譲治的な着眼！
その期待は裏切られなかった。
しかも、ガダルカナルからインパールへ話が飛んでいくあたり、クトゥルーにつなげるのに、これか、これかーっな感じ。新鮮で勢いがある。
難を言えば、深きものどもとの関わりがいまひとつ説明不足であったこと。勿論、クトゥルー神話を熟知している人なら、説明はいらないといえばいらないが、物語的にはやはり説明不足と感じてしまう。この知識がないと、本宮中佐の行動にもいまひとつ納得がいかないし、そもそも、本宮中佐の父親って？　という疑問が湧いてしまう。
同様のことは、重要なキーマンである陸軍大佐についても言える。
彼の正体は示唆しかされず、これもクトゥルー神話の知識がある程度以上ないと、筋が通らないように思う。
つまり、この作品、かなり読者の知識量によりかかっているのではないかとも思うのだ。
とはいえ、それは玉に瑕というやつで、そもそもCMFの読者ならば確かにその程度の知識は持っている人の方が多かろう。
架空戦記としても着想が面白いし、最後の列車砲の仕掛けは、なかなかにぞくっとさせられるし、爽快とも言える大がかりなものになっている。
全編に血臭漂う。そして通常の兵器、すなわち人間の知恵が邪神の前では役に立たぬ無力感もなかなか凄い。