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かぶき手帖(2012年版)
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かぶき手帖(2012年版)

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かぶき手帖(2012年版)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 日本俳優協会/松竹/伝統歌舞伎保存会
発売年月日 2012/04/01
JAN 9784902675085

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2012/05/27

・日本俳優協会編「歌舞伎手帖」(日本俳優協会他)は 10年ほど前から出てゐるやうだが、私は今年版を初めて買つた。本書の中心は「最新歌舞伎俳優名鑑」である。私もこれがほしくて買つた。 いささか古いのはある。最近の主な役者のことはweb上でも調べがつく。しかし、さうもいかない役者もゐ...

・日本俳優協会編「歌舞伎手帖」(日本俳優協会他)は 10年ほど前から出てゐるやうだが、私は今年版を初めて買つた。本書の中心は「最新歌舞伎俳優名鑑」である。私もこれがほしくて買つた。 いささか古いのはある。最近の主な役者のことはweb上でも調べがつく。しかし、さうもいかない役者もゐるし襲名も続いた。そんなわけで 新しいのがほしくなつたのである。本書は「歌舞伎手帖」とはいふものの、歌舞伎狂言に関する記述はない。あくまで役者中心である。狂言の 粗筋等を知りたければ、その種のハンドブック、入門書の類を見よといふことである。さすが俳優協会編集、狂言より役者である。それでも書 名が名鑑になつてゐないのは、他に劇場案内とか、公演スタッフや関係演奏家の名鑑、更には巻頭特集として「歌舞伎のかつらと衣裳」といふ のがつくからである。劇場案内には基本データと一部の劇場に座席表が載る。これも便利である。劇場に足を運んで役者を観に来てほしいとい ふ気持ちの表れであらう。関係者の名鑑には、少ないが、演出家や振り付け師、狂言作者が出てゐる。これもあまり出てこない情報ゆゑに役に 立つ。歌舞伎の歴史と狂言以外の、歌舞伎の現状を知るに必要と思はれるものは網羅しようといふ編集方針なのであらう。だから、名鑑を中心 とした本書はこれで良い。極論だが、特集はいらないとさへ思ふ。 ・問題の歌舞伎俳優名鑑である。市川右之助に始まり名題下の山崎咲十郎までの役者が載る。これで現在の歌舞伎役者全員なのであらう。名題 下は大体120名、これで多いか少ないか。この役者が消えれば歌舞伎は保たない。廃絶の道しかない。猿之助一門のやうに、それなりに活躍 の場を与へられてゐる名題下もゐるが、多くはさうではなからう。名題下の役割を、己が本分を守つて日々の舞台を務めてゐるのであらう。門 閥厳しきこの世界、それゆゑにこそここまで守られてきたとも言へるが、私にはそれゆゑにこそ滞つてゐると思へてならない。勉強会だけでな く、本公演でも門閥外の役者が御曹司に混ぢつて活躍できる日が一日も早く来ることを願ふばかりである……と思ひつつ名題の役者を見る。当 然これはおもしろい。名鑑の執筆は演劇記者の類である。劇評を書くために観劇の数をこなしてゐる人達である。しかも署名記事である。いい 加減なことは書けないはずである。例へばこんなのがある。「初舞台から四十年。重ねた経験が大きく花開く時を期待したい。」これは要する にまだ花開いてないぞ、しつかりせよといふことである。「実直かつ朗々たる声での、草書風の軽妙洒脱な役も見てみたい。」といふのは、楷 書から抜けて草書に入つてほしいといふことで、やはりもつと頑張れといふことであらう。さうして花開くと「多彩な魅力に拍車をかけた。」 となる。これはまた見事なほめ言葉である。「男も錆びたり、というべきか。」はいささか渋いが、なかなか良いほめ言葉である。役者は観れ ばはつきり分かる。こんなのもある。「芸域は無限に広がりそうだ。」これはお前は何でもできる役者だ、エライと言つてゐるわけで、御曹司 なら当然だと言はれさうであるが、さうでない役者ならばこれは己が実力のしからしむるところ、本当にその努力は見事だといふことになる。 ただし、すべての役者評に納得できるわけではない。当然である。見方、感じ方は人それぞれ、共通する部分はあらうが、そこから外れるのは どうしやうもない。さういふ見方もあるのだと思ふのみである。最後にこの一文、「かつて猿之助の撒いた種は、門閥外からの人材の登用な ど、いまや誰の目にも明らかだ。」(66頁)他の門閥の倣ふことを期待するのみ。

Posted by ブクログ

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