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武満徹・音楽創造への旅
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武満徹・音楽創造への旅

立花隆(著者)

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武満徹・音楽創造への旅

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋
発売年月日 2016/02/01
JAN 9784163904092

武満徹・音楽創造への旅

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商品レビュー

4.8

12件のお客様レビュー

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2020/04/19

1996年の逝去から24年、四半世紀が過ぎようとしているが、日本人作曲家として未だに武満徹を凌ぐ名声を獲得した者はいないように思える。残念ながら、クラシック音楽の社会的地位が当時よりも低下していることを考えれば、これはつまり、彼を超える日本人作曲家が今後登場する可能性も低い、とい...

1996年の逝去から24年、四半世紀が過ぎようとしているが、日本人作曲家として未だに武満徹を凌ぐ名声を獲得した者はいないように思える。残念ながら、クラシック音楽の社会的地位が当時よりも低下していることを考えれば、これはつまり、彼を超える日本人作曲家が今後登場する可能性も低い、ということを示している。 本書は、立花隆が武満徹自身への膨大なインタビューと、関連するドキュメントの徹底的な読み込み、さらには武満徹の関係者へのインタビューも重ね合わせ、「文學界」での6年近い連載をベースに、武満徹の偉業を振り返るという一冊である。徹底的な取材量で知られる立花隆だけに、アウトプットとしての本書は781ページ。参考文献などはないから、この全てが本文であり(写真等のページはあるが10ページ程度に過ぎない)、武満徹という作曲家を知るのに、これより優れた本はないだろう。 本書を読んで最も印象的だったのは、後期の武満徹の作品における”フォーム”の重要性である。 西洋のクラシック音楽で最も利用される”フォーム”の一つはソナタ形式である。これは以下の3つの構造から成り立っている。 ・提示部:2つの主題(片方が男性的であればもう片方は女性的、というように対立的な性格付けをされるケースが多い)が提示される ・展開部:主題の変奏、フーガ、転調などの作曲技法を元に、主題が発展していく ・再現部:再度、2つの主題が戻ってくる。そして、対立的な性格を持つ2つの主題は、弁証法的に解決され、クライマックスを迎える 武満徹はソナタ形式に代表される典型的な”フォーム”からの逸脱を志向した。しかし、弁証法という強いカタルシスをもたらす西洋音楽の”フォーム”に抵抗できる音楽世界を作るには、新たな”フォーム”を自ら作り出すしかない。それが後期武満徹の世界観となる。 この初期と後期の間には、もちろん、彼の名声を一気に広げた「ノヴェンヴァー・ステップス」の存在がある。ここでは琵琶と尺八という邦楽器の力を借りることで、新たな音楽世界を作り出すことに成功したわけだが、このような特定の楽器及び奏者を触媒とする手法には限界もある。その思索が様々な”フォーム”に基づき作曲される後期作品へとつながっていく。 例えば後期作品では、「海(SEA)」を題材として、E♭・E・Aの3音を”フォーム”として採用した「遠い呼び声の彼方へ!」などが挙げられる。そして、このような”フォーム”の存在は、リスナーにとってはどうでも良いことであり、ただ美しく強固な音楽世界を作りだすためのツールに過ぎない、という目線も重要であろう。 初期から後期までの作風の変遷を追いながら、武満徹が成し遂げた偉業を理解することができる。お勧めできる人は極めて限られるであろうが、武満徹を知らなかったとしても、音楽の創作に関わる人にはぜひ読んでほしいと切に思う。

Posted by ブクログ

2019/07/01

なんの折だったか、ふと立花隆氏って最近見ないけど(例によってオレが見ないだけの話だけど)、どうしてるのかしらと思って調べてみたら、思いがけず武満徹氏の本を出していることを知った。 届いてみてびっくり、ゆうに780ページあり、しかも開いてみたら二段組、活字がページの隅までギッシリ...

なんの折だったか、ふと立花隆氏って最近見ないけど(例によってオレが見ないだけの話だけど)、どうしてるのかしらと思って調べてみたら、思いがけず武満徹氏の本を出していることを知った。 届いてみてびっくり、ゆうに780ページあり、しかも開いてみたら二段組、活字がページの隅までギッシリという大著であった。 まあ、氏の著作はいずれも大著が多いが、これまでいくつか読んだ限りでは、長くても面白く読み通せるのが常である。テーマというか背骨がビシっと決まっているのと、文体(ロジック)がきれいなせいではないかと思う。 そういうわけで、この本も大変面白く読んだ。 「文學界」という雑誌にかなり前に(武満氏の存命中から)連載されたものだそうだが、綿密な文献検索とインタビュー(武満氏やその周辺の肉声)がほぼ切れ目なく混交した、リズミカルな文章で氏の足跡を追っていく。 作曲家(音楽家)を志すきっかけとなった「蓄音機のシャンソン」のこと、街角でピアノの音が聞こえるたびに、その家に触らせてもらいに行ったこと、病気(結核)のこと、「デビュー作」酷評のこと、「ノヴェンバー・ステップス」の成立過程(と、前にも読んだ名手たちとのやりとり)、幅広い交友関係、音(だけでなくものごとの成り立ち)に対する鋭い感受性と洞察、そして何より「ノヴェンバー」後も含む、人生を通した音楽的な変転など・・・。これまで見聞きした内容がいかに点描に過ぎなかったと思わさる、その深掘りぶりには圧倒された。 しかし本の2/3辺りまで来たところで、突如として武満氏が亡くなってしまう。インタビューが柱の連載ゆえ・・・というか、著者自身これからあれも訊こう、これも訊こうと思っていた矢先のできごとで、相当な衝撃を受けたらしい。一読者としても、その巨大な思索が永遠に喪われてしまったことに改めて思いを致さずにはいられない。 そこから先は遺されたインタビューをテーマ毎に配置した記事になるわけだが、どうしても尻切れの印象は残ってしまった。 ともあれ雑誌の連載は最後(がどこなのかはともかく)まで続けられた。単行本化もゲラ刷りの状態までは進んだらしいが、その後18年も寝かされたままだったのだという。それほど、立花氏のショックが大きかったのである。 後書きに、出版がまた動き出した理由が書いてあった。 ショックから立ち直れないまま長年原稿を寝かせてしまったが、取材の過程で知り合ったパートナーの女性(箏楽家)が2015年に癌で亡くなるのに及び、立花氏に本の完成を望んだというのである。 そこから作業は一気呵成に進み、本は昨年上梓された。これでようやく武満氏と、(癌の戦友でもあった)その女性のもとに届けることができる・・・と結ばれる。 最後に、すっかり泣かされてしまった。

Posted by ブクログ

2019/06/16

第一人者の筆による渾身のルポ。二段組770頁はさすがの読み応え。筆者が現代音楽好きで武満の音楽を初期から聴いてきて、相当、熱を入れて書いている。これだけのボリュームで抽象的な材料を扱っていて、いろいろな人物が登場するのに、一箇所も不明な文章がない!流石。 武満が亡くなって出版する...

第一人者の筆による渾身のルポ。二段組770頁はさすがの読み応え。筆者が現代音楽好きで武満の音楽を初期から聴いてきて、相当、熱を入れて書いている。これだけのボリュームで抽象的な材料を扱っていて、いろいろな人物が登場するのに、一箇所も不明な文章がない!流石。 武満が亡くなって出版する機を失ってから18年後の出版になったことについて、邦楽をするがん友の女性の死が関係したことに触れていて、人を動かすのは情であることを実感。 武満の音楽家としての特異性は、一般的な西洋音楽の基本を学ぶことを殆どせず、映画の音響、生活音の音楽への組み込みなど、音そのものの探求から進んだことで、従来パターンにとらわれない音づくりになったのではないか。また詩人とのつきあいなど多くの文化人との濃い交流が成長に大きく影響している。現代詩人の瀧口とスケッチブックを交換しあう挿話など人間味溢れていて素晴らしい。 戦後の何もない時代からのスタートで、みんなが試行錯誤しながら新しいものを求めていく熱気が伝わる。翻って今は既に何でも揃っているような気持ちから「求めていく」力が弱まっているなあと思う。

Posted by ブクログ

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