「中学受験」の経済学 わが子の学歴のつくり方

野田英夫(著者)

• 販売会社／発売会社: 日販アイ・ピー・エス
• 発売年月日: 2016/01/01
• JAN: 9784904920176

商品レビュー

2021/04/25

タイトルから想像した内容とは異なり、「中学受験」ありきで、その価値と塾選び、志望校選び、親の心構えなどについて書かれた本。

著者の経歴がカリスマ塾講師→大手進学塾経営企画→早慶中学受験塾開校、というだけあって、大手塾の塾のビジネスモデルや仕組み、生徒や保護者の現実についての情報はとても参考になった。

長女の就学にあたり中学受験を検討している私は、むしろそういう話が知りたかったので、読む価値があった。逆にタイトル通りの内容を期待した人は期待ハズレかと。

特に「中学受験の本質はやり抜く力＝非認知能力を育むこと。受験を通して生きる力を育てる」という著者の理念には深く共感し、中学受験に前向きに取り組みたいと思えてきた。

個々の生徒のケースが詳細な情報や、会話、考察を交えていくつも載っているのも、具体的にイメージできてよかった。特に早慶8中を検討している人は読むと得るものが多いと思う。

＜以下本文より意訳抜粋＞

・ボランティア活動者数の内訳(2006、米国)
高卒未満9.3% 高卒19.2% 大卒30.9% 大学院卒43.3%

・大手塾のシステムは「休まないウサギ」を頂点に置いた塾カースト。多くの受験生は「休むウサギ」か「普通のカメ」なので、ゴールを見失い遭難する。
"適切な指導で普通のカメもゴールに辿り着ける"
"走り続けるコツをつかんだウサギ"

・子育て全体にかかる経費をエンジェル係数(総支出に対する教育費)と呼ぶ。

・中高一貫校では、長期的なキャリアを見据えて、そこに投資する時間的・精神的なゆとりを得られる。

・MITのインタビューより「最先端なんて4年も経てば陳腐化する。そんなものを今教えても意味がない。だから常に、最先端のものを作り出すベースになる力をつけさせようとしている。それがMITの役割である」

・ピグマリオン効果は幼児期〜小4くらいまでプラスの効果として顕著に現れる。親や教師の期待は子どもの学力を育てる効果がある。ただし、それ以上の学齢にはあまり効果を示さない。親の大きすぎる期待は邪魔者扱いされ、時に受験生を追い詰める。
(『マイ・フェア・レディ』の原作でイライザはヒギンズ教授から自立し、等身大の自分で生きられる別の男性を選ぶ)

・不公平だらけの世間にわが子を送り出すとき、武器を一つだけ選ぶなら、私は「どんな困難が襲ってきてもそれを乗り越える力」だと答える。それは、努力することの大切さ、周囲への感謝、将来の目標、諦めずやり遂げる心の強さ。

・小4以上のこどもと、親は将来の夢を語り合い、問いかけ、中学受験をする目的を明確なビジョンとしていく。

・親の思い、母親主導で始まった中学受験だったとしても、どこかで本人の情熱が親の情熱を超える瞬間がやってくる。これがやる気の逆転現象です。

・人生の中で自らの努力の成果に嬉し涙を流したことはありますか？中学受験を勝ち抜いて、希望の学校に合格しま子どもの多くは涙を流して喜びます。
努力のない合格なら涙など出ない。遊びたい盛りにやりたいことを我慢し、友人たちと競い励まし合いながら頑張ってきたからこその涙なのです。