朝鮮族のグローバルな移動と国際ネットワーク 「アジア人」としてのアイデンティティを求めて 中国朝鮮族研究会叢書Ⅰ

村田吉優(その他), 一般社団法人地域再生推進機構(その他)

• 販売会社／発売会社: アジア経済文化研究所
• 発売年月日: 2006/07/14
• JAN: 9784903504025

商品レビュー

2008/02/14

朝鮮半島から中国に移民し東北三省を主な定住地としている少数民族である朝鮮族についてのシンポジウムをまとめた本。内容の重複などもあったが、面白いのもあった。危機感をもって語られていたのが朝鮮族の人口減について。96年からマイナス成長を続けているが、その主な原因は、１、80年代の郷鎮企業の創業ブームで朝鮮族男性主導の企業は多くが失敗した反面、それと同時期に起こった女性主導の小さい自営業ブームは成功してしまい、２、92年の中韓国交樹立に伴い、韓国系の会社や韓国人を対象にした遊興業で働くため多くの朝鮮族女性が開発都市に移住したり、３、韓国への出稼ぎブーム「コリアン・ドリーム」と嫁入りブームで中国を後にする人が増えたためとされている。なぜなら、本書での調査からすると朝鮮族男性は学歴を重視するあまり専門技術や使える資格がなく、「無能でお金が稼げないからだ」という評価を朝鮮族女性から受けているからだという。つまり●出生人口の減少●結婚適齢期女性の朝鮮社会離脱●専門技術不在などによる若い男性の就職難が主な原因とされている。中には、「コリアンドリーム」が地域と家族の紐帯断ち切ってしまったと嘆き悲しんでいる発表者もいたが…。ほかには朝鮮族のアイデンティティの変遷についての話がなるほどと思った。　第一期は45年以前で、朝鮮民族の独立、朝鮮の歴史、朝鮮文化に拠っていたが、第二期は45〜65年ごろで、社会主義的「イデオロギーアイデンティティ」を共同体認識の優先事項としていたこと、北朝鮮に同類意識を求め、一体感を感じてもいた。千里馬運動もこの時期。第三期は65年以降で、朝鮮族は中国共産党から忠誠を強要されたため（紅衛兵と北朝鮮はビラや街宣車を活用して悪口合戦などをしていた）、北朝鮮とも微妙になり中国の中での少数民族という立場を認識し今にいたっているという。