巨大地震による複合災害 発生メカニズム・被害・都市や地域の復興

八木勇治, 大澤義明

• 販売会社／発売会社: 筑波大学出版会
• 発売年月日: 2015/11/01
• JAN: 9784904074381

商品レビュー

2017/08/20

筑波大学名誉教授、糸井川栄一；筑波大学教授、大澤義明，恩田裕一，境有紀，田村憲司，武若聡，辻村真貴，磯部大吾郎，松島亘志，金久保利之，八木勇治，庄司学，山路恵子；准教授、エネスク・ボグダン，梅本通孝，藤野滋弘，八十島章，山本亨輔；助教、太田尚孝；特任助教、小林隆史の共著。
筑波大学の授業科目「巨大地震による複合災害-発生メカニズム・被害・都市や地域の復興」(第1～10章)、「ジオハザードの科学」(第1，3，8章) の教科書。
実情がわかる。地震の本の中で、一般向けとしては最高水準。

地震について網羅的に解説している。筑波大学の理学と工学の(ほぼ)全分野の教授が結集して書いており、分野による偏りが少ないことが特長。地震の解説者としてテレビ出演も多い、八木先生、境先生、磯部先生も著者の一人である。
章ごとの分担執筆であるが、どの章も柔らかい語り口で一般人向けに書かれていて統一感はある。また全ての章で実例が紹介され、特に3.11東日本大震災の記述は多く全貌を再認識するのに最適である。数式はほとんど無く、一部に高校物理程度の知識を要する箇所はあるが、文章も読みやすい。
ただ、「なぜそう言えるのか」詳しい説明が不充分で物足りなさを感じるかもしれないが、後述の大学院科目を受講した経験から言うと、理論はかなり専門的で素人にはけっこう難解なので、本書は一般人が読むにはギリギリのレベルの高さと言える。

工学システム学類の学生なら複数の授業で繰り返し耳にする内容なので購入する必要は無いかもしれないが、口では言うが板書はしない背景・エッセンスが文章でまとめられているという点では購入の価値はある。大学院科目の「耐震工学特論」は本書に沿って理論的裏付けが解説されるので、その参考書としても有用。

目次
1.地震現象と津波現象
2.地震の揺れと被害
3.大津波の実態とこれからの津波防災
4.地盤災害
5.建物被害
6.地震による建物の崩壊挙動を再現する
7.社会的基盤施設の被害とその設計
8.原発事故による放射性物質の長期的環境動態とその影響
9.人間行動と社会的影響
10.被災自治体での課題