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吉原という異界 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2015/09/01 |
JAN | 9784309414102 |
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吉原という異界
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3.5
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<目次> 序章 太夫高尾など 第1章 戦後の新都 第2章 吉原開店 第3章 元吉原の変遷 第4章 新吉原の誕生 第5章 元禄からの展開 第6章 栄枯盛衰 <内容> 歴史それも江戸時代に詳しい著者の吉原紹介本。古典や資料などを駆使している。史料として原文を紹介して...
<目次> 序章 太夫高尾など 第1章 戦後の新都 第2章 吉原開店 第3章 元吉原の変遷 第4章 新吉原の誕生 第5章 元禄からの展開 第6章 栄枯盛衰 <内容> 歴史それも江戸時代に詳しい著者の吉原紹介本。古典や資料などを駆使している。史料として原文を紹介しているので、やや読みにくい部分もあるが、それだけ丁寧ということ。特に元吉原の部分は、かなり勉強できた。
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・吉原に関する本を少しだけ読んだことがある。それらは、たぶん、新吉原についてのものであつた。誰もが知る淺草の吉原である。塩見鮮一郎「吉原という異界」(河出文庫)は 日本橋にあつた元吉原についても書いてある。いや、それ以前も書いてある。ごく大雑把に言つてしまへば、本書は家康江戸入府...
・吉原に関する本を少しだけ読んだことがある。それらは、たぶん、新吉原についてのものであつた。誰もが知る淺草の吉原である。塩見鮮一郎「吉原という異界」(河出文庫)は 日本橋にあつた元吉原についても書いてある。いや、それ以前も書いてある。ごく大雑把に言つてしまへば、本書は家康江戸入府以来の廓の変遷史である。だか ら新吉原だけで話は、いや本書は終はれない。専門書を捜せばかういふ内容の書は必ずあると思ふのだが、何しろ本書は文庫本である。手軽である。気軽に読め る。著者は小説家であるが、車善七や弾左衛門関連の著作も多い。被差別民の扱ひには慣れてゐる。その意味で、吉原、いや傾城町変遷史を書くのに最適の人で はないかと思ふ。 ・本書で最も印象に残つた一文、「『吉原』という命名は、おもては『葭原』かもしれないが、本意は庄司甚右衛門らの出身地の静岡県の吉原市の可能性はけっこうたかい。」(155~156頁)普通は、あたりに葭(葦)が生ひ茂つてゐたところから吉原だと説明される。そもそもの京橋からしてもとは「葦沼の汐入 り」(31頁)だつたらしい。葭が生い茂つてゐたのである。その後間もなく、これは「いまの人形町のところに移転し(中略)すでに『よし原町』と呼ばれていた。」(34頁)といふ。ここもまた「葦沼の谷地」(35頁)であつたらしい。これが後に人形町の吉原になつていく。淺草の新吉原に対して元吉原である。ここは葦沼だつた。しかし、だから葭原=吉原であるとは単純に言へない事情が実はある。この時総名主となつた庄司甚右衛門は、「慶長の初めのころ、駿河の吉原宿、いまの富士市吉原で遊女屋をかねた宿屋をやっていた。江戸のめざましい発展を耳にして、二十五人の仲間とともに」(傍点省略、43頁)やつてきて、最終的に人形町に落ち着いたらしい。それゆゑに「かれらの出自の故郷の名を遊郭に冠した。」(44頁)といふのが吉原の名の起こりであるといふ。甚右衛門は京橋にも関係してゐたらしいので、これもまたこの説明の吉原になるらしい。つまり、吉原はもともと地名だつたのである。そこにたまたま葭が茂つてゐたから葭原説も生まれたのである。私には著者の故郷地名借用説の当否を判断することはできないが、傾城町吉原を考へるうへでこれは大きなポイントになると思はれる。この40年後に移転する新吉原もまた寂しい場所であつた。日本堤辺りは葭が生ひ茂つてゐたわけではなささうだが、人形町とは比ぶべくもない僻地であつた。これが後の私達が歌舞伎等で知る吉原になつていくのである。本書はこの変貌の様を描く。遊女数なども記してある。地図等も豊富である。それらは現在の主な駅等と重ねて書いてあるので、現地を知つてゐる人にはどの辺りかと見当がつけられようし、その変貌の様も思ひ浮かべられよう。私はといふと、 そんな地図を見て、今まで気づかずにきたことがあるのを知つた。弾左衛門と車善七である。これまで見てきた吉原の地図は正に吉原の地図であつた。周辺省略である。ところが本書の地図を見ると,善七がお歯黒どぶのすぐ横にゐるではないか。弾左衛門は待乳山聖天の近くである。所謂被差別民は辺鄙な地に追いやられてゐたに違ひないから、傾城町もまたさういふ扱ひであつたといふことであらう。だからこそ、時の権力の意に従つて居所を変へざるを得なくなり、元吉原から新吉原への移転も行はれた。幕末維新後もさういふ中で動いてきた。当然といへば当然のこと、本書はそれをきちんと描く。被差別民がここにゐたのも、移転前からゐたといふだけではないと知れる。そんなことにも気がついた。本書はそんな書であつた。
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