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三十年後 ホシヅル文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2015/09/01 |
JAN | 9784109100564 |
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三十年後
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※このレビューにはネタバレを含みます
星新一の父・星一が1918年に描いた、その30年後「1948年」の物語。 どんな予想がされていたのか気になっていて、ようやく読めた。 星一が星製薬の創業者で星薬科大学なども興していたことはよく知らなかった。 星一は1873年生まれなので、本書は45歳の時に書いた本となる。なお、星一は調べると21歳(1894)に渡米、在学中に新聞事業を興している(うまくいかず帰国時に売却)。33歳(1906)に湿布薬を開発、35歳(1908)に衆院選当選。38歳(1911)に星製薬を創設して胃腸薬やキニーネ製造などをして発展し、東洋一の製薬会社と呼ばれるようになる。本書はそうした中で描かれた。 ## ■あらすじ 1948年に、30年前に南洋に隠遁した大政治家・嶋浦太郎91歳が帰国する。 かつての知人たちに歓迎され、嶋浦は30年後の日本の様子を聞く。 未来の日本では、薬により精神の制御が可能になっており、人々は若返りを実現している。 若返った嶋浦太郎は、接待してくれた知人の娘・花枝に恋をするが、薬により正気を保つ。が、この時代には結婚は国会での審議事項となっており、花枝との結婚を勧められて戸惑う。そんななか、長寿になった人々は暇になって反乱を起こしており、これを鎮圧する。 最後に、日本をここまでに成長させた星製薬の創業者に会いに宇宙へいき、知人であることを確認する。 ## ■感想 まず本書の骨子となっているのが「思想統制により平和を実現できる」という思想。いま思えばディストピア的だが、本書はどうやら皮肉ではなく明るい未来として描いている(著者は製薬会社創業者だし)。自由意思の議論が起こるのはまだ先だし、この時代は国民国家と全体主義の発展過程にあり、無邪気に信じられたのだろう。また、ハクスリーの『素晴らしい新世界』は1932年の刊であることも踏めると、思想統制の実現は新しいSFだったのかもしれない。 描かれる欲求は普遍的で、移動の自由、不老長寿の実現、コミュニケーションの同時性の解消等々。夢枕とかよくできている。これらの一部は現在実現しており、実現した先に何が起こるのか、というのは興味深い。 特に、不老長寿により暇になって反乱がおきる、という考察は深みがある。 また、富の平均により、名誉をめぐる犯罪が起きる、というのは、現在の評価経済を言い当てているようで、こちらも洞察が深い。 浦島伝説を下敷きにした物語構成もおもしろかった。 かつての女性たちに囲まれる様とか、俺TUEEE的な展開は、『特命係長』的な中年向けポルノの感はある。星製薬を登場させる自画自賛ぶりもどうなのか……と思うけど、本作はちょうど同社が創業7年にして成長過程にあるので、販促的な意味もあったのかもしれない。 花枝との結婚について、24歳差ならいける、というのはちょっとドン引き。まあ著者も地の文で「有邪気」と書いていたり、嶋浦太郎翁も最後まで固辞してはいたものの、「無しではない」価値観だったように思う。 当時の価値観や普遍的な未来への欲望を知ることができてよかった。
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