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魚のように 新潮文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2015/07/29 |
JAN | 9784101260419 |
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魚のように
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商品レビュー
2.8
12件のお客様レビュー
著者が高校生の頃に書いた小説とのことで、このくらいの年代が頭の中で漠然とモヤモヤ考えていることを言語化する描写が多くあるように思われた。一方で、2作品目の「花盗人」の終わりのように、理解の範疇を超えるような描写も書かれていて、良くも悪くも悶々としたまま本を閉じる形になった。 ==...
著者が高校生の頃に書いた小説とのことで、このくらいの年代が頭の中で漠然とモヤモヤ考えていることを言語化する描写が多くあるように思われた。一方で、2作品目の「花盗人」の終わりのように、理解の範疇を超えるような描写も書かれていて、良くも悪くも悶々としたまま本を閉じる形になった。 ==== コンタクトレンズを入れてみて驚いた。 何もかもが見え過ぎるのだ。世界がこんなにも緻密ではっきりしているなどと、色がこんなにも沢山あふれ、全てのものがくっきりと存在しているなどと、想像したことさえなかった。 片手をちょとあげてみせる友人の指先の詰めや、木の葉の一枚一枚を支える細い枝や、そんなものたちが突然僕の世界に乱入してきた。新しく入ってきたものの中には当然美しいものもあったが、大抵は奇妙に生々しいものばかりだった。 あまりに鋭過ぎる視覚は無理矢理僕に現実を教えた。とりどりの色のしべに堆積する花粉、つつましくひらかれた白い花弁に密生する細かな毛、蟻のめまぐるしくうごめく手足、風にわさわさとゆれる山…… 足許から突き崩すような教学ではないにしても、今までの美意識をじわじわと侵していく小さな失望の数々は、不気味な感じさえ持っていた。(p.17) 夏は四季の中でも別格だと思う。 僕は決して夏が好きではなかったけれど、夏への憧れは強烈なものを持っていた。蒸し暑く、虫の多い現実の夏はいつも僕を幻滅させたが、夏が終わってしまうと夏の日差しや夏の音、水のにおいを待ちのぞんでいた。 僕の四季はいつもそうやって巡っていた。夏が来るまで夏に憧れて、実際の夏を辟易しながら越す。そしてまた夏を待つ。(p.26) 姉は僕に全てをさらけ出してくれた。僕は姉の忠実な鏡だった。姉は自分の姿を僕に投写することで見つめていた。裸の自分を大きな鏡に映して、臆することなく向かいあうのは、なかなか出来ることじゃない。けれど姉は、いつでも僕の中に自分を見すえていたのだ。 僕達の関係は終わってしまった。姉が自分に気付き、僕が姉を知ってしまえば鏡は砕けるしかない。終わりの前兆を僕は知らない。当然父も母も君子さんも知らなかった。知っていたのは姉ばかりだ。姉はひとりで秒読みしていたのだ。(pp.84-85)
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内容がすごく面白かったとは言えないけれど、著者のデビュー作で、17歳の高校生が書いたものと意識するとすごい。 とても老成していて、純文学への憧れや当時の著者の中の純文学像みたいなものが透けて見えてきました。 最近の作品も読んでみたくなりました。
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十七歳のときに書かれたという短編ふたつ。中脇さんの原点になるのでしょうか。荒々しさはなく、むしろひどくしずかに、陰のなかでもぞもぞ動いているような作品でした。 物足りなさを感じる人もいるかもしれないけど、前述した原点をみたいという感覚で読むと、たいへん興味深いし、年齢のことを言う...
十七歳のときに書かれたという短編ふたつ。中脇さんの原点になるのでしょうか。荒々しさはなく、むしろひどくしずかに、陰のなかでもぞもぞ動いているような作品でした。 物足りなさを感じる人もいるかもしれないけど、前述した原点をみたいという感覚で読むと、たいへん興味深いし、年齢のことを言うのはナンセンスだけど、だけど到底十七歳が書いたとは思えない。毎日どんな景色をどんなふうに見ていたんだろう。
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