不思議の国 信州 長寿の秘密を探る

佐々木正(著者)

• 販売会社／発売会社: 言視舎
• 発売年月日: 2015/06/01
• JAN: 9784865650235

商品レビュー

2025/08/31

5. 信州人の「長寿の秘密」がおぼろげながら浮かび上がってきました。その一つ目が、「狩猟採取」の伝統が、人々の生活に色濃く残っているということ。
そしてもう一つが信州人の、「緑茶文化」と呼んでいいほどの、緑茶を四六時中、愛飲する食生活「喫茶習慣」の普及と定着

16. シロとは特に、マツタケについて言う言葉ですが、赤松の根元には、決まってマツタケが生える場所がある。そのシロを覚えれば、季節になってその場所に行くと、必ずマツタケが群生しているというのです

35. 地元で長年守られてきた「言い伝え」は、そのような長い経験に裏付けられた先人の知恵の結晶だと言って良いでしょう

42. 冬場はタンパク源が乏しいために、このようなハチノコのような食習慣が定着したのではないか、との説を耳にした

50. カモシカはシカと言っても、ウシ科に属する動物ですから、体格は大きいものの思ったより性格は温和です

56. 山国で暮らしてきた信州人は、都会の人間とは異なる野生動物に向けての、独特の「まなざし」があると思うのです。それが、動物たちとの「共生」の感覚です

64. 塩尻市の平出遺跡も、日本三大遺跡に指定されているとおり、縄文土器が出土することで有名です。その時代は縄文遺跡の「貝塚」などの発掘で分かる通り、生活のすべてが「狩猟採取」により営まれていました

69. いつのころか、人間は「働くこと」が美徳とされて、「勤労感謝の日」が設けられたり、遊んで暮らすことを「怠惰」「非生産的」と非難されることがありますが、もともと人間は、いまの価値観でいえば「遊んで暮らしてきた」と言っていいと思うのです。
狩猟採取で生活を営み、残りの時間はライオンのように、のんびりと寝て暮らす。これが本来の人間の生活スタイルだったと言って良いのでしょう

71. 19世紀初頭のオランダの学者、ホイジンガという人が、人類の定義としてホモ・ルーデンス、いわゆる「遊ぶ人」と言ったことは、すでによく知られています。人類の定義はほかに、ホモ・モーベンス(動く人)やホモ・ファーベル(道具を使う人)など、さまざまな角度から人類の活動をとらえて定義されてきた

80. バーゲンやスーパーの安売り、福袋、初売りなどは「狩猟採取」の本能の現れといわねばならないでしょう

81. 「知るよりも、楽しむにはしかず。楽しむよりも、歓ぶにはしかず」by孔子
人生の究極の目的は、「歓ぶこと」だと言っているのです

92. 「人間は生まれによって尊いのではなく、生き方によって尊いのである」by釈迦

101. 人類が営んできた狩猟採取の行為は、おのずと関わる人に、農耕では生まれない「歓び」と、共食を成り立たせる「平等」の感覚を与えてきた。そのことが信州人の長寿を、その底で支えてきたと思われてならないのです

107. 信州独自の食文化の小道具「爪楊枝」

110. 信州は標高が高いために、ほぼ一年中、空気が乾燥しているという気象条件があります。そのため身体がおのずと、水分の補給を求めるのです

120. 漬物で大量の塩分を摂取しても、これだけ緑茶を飲んでいれば、その大半は「おしっこ」として排泄されるはずです。塩分の多い漬物を食べる、その途中でお茶を多飲する。おのずと塩分は排泄されて、健康に影響を与えるほどの摂取量とはならない

120. 野沢菜などの漬物は、そのほとんどが「繊維質」です。日常の食事で繊維質をとることが、大腸ガンなどの病気を防ぐことは、予防医学の常識

138. なぜソバが有名かというと、言うまでもなくソバは寒冷地のやせた土地が、適地といわれており、信州のソバ処は、良質のそば粉が収穫できる、ソバに適した気候風土となっているのです

142. ソバという食べ物は、使用する粉によって「更級(さらしな)、ひきぐるみ、田舎」、大きく三つに分かれており、またつなぎに何をどのくらい使用するか、また汁の出汁の問題などで、百軒あれば百軒がそれぞれ、個性をもった蕎麦屋さんとなっています