旅の手帖より エッセイ集1 神谷美恵子著作集5

神谷美恵子(著者)

• 販売会社／発売会社: みすず書房
• 発売年月日: 1981/06/30
• JAN: 9784622006350

商品レビュー

2024/10/28

神谷美恵子さんのエッセイや講演などをまとめたもの。今までの著作と内容が被るところもあり、登場した人たちや軽く紹介されていたアンケートの詳細などがあってより解像度が上がっていく感じ。
講演「生きがいを求めて」の、「生きているということは、とりもなおさず歴史的時間の中に生かされていること」という話が面白かった。神谷さんは悠久の歴史との短い接点である生きている時間をどんなふうに生きるか、生かしていくのかというところに注目しているのだけど、私は強制的に歴史的時間の中に「生かされている」というところが気づきだった。人間は歴史など連綿と続く大いなるものとの接点を求めるものだと思ってきたけれど、それは本来当たり前になされているものなのだ。ただそれを、人間の側が見失っているだけで…。だからほんの少しの気づきさえあればどんなひとでも、そう主婦でも病人でもきちんと歴史に接続されている。生きた痕跡を残している。なんとやさしい、包容力のある見方であることか。
神谷さんは科学的な興味も大いに持ち実践の人でありながら、いつも超自然的なもの、人間を超えた何かへの尊敬の念を素直に表現し、自然への新鮮な感動のまなざしをそそいでいる。読んでいて胸がすくような気持ちになって、なんだか励まされる（人間としての格が違いすぎて、おこがましい気もするが）。

2013/04/08

バッハの話とスイスの話。

虚栄心というか利己心のない人の紡ぎ出す言葉には、クセやアクがない。

すっと染み入る、そしてくどくないから、またパラパラとページをめくる。

何かを得ようとする文章ではなく、ありのままの感情を言葉に表現すること自体に喜びというか目的がある読み物に出会える機会があると人は豊かになる。