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心のてのひらに
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心のてのひらに

稲葉真弓(著者)

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心のてのひらに

定価 ¥1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 港の人
発売年月日 2015/03/01
JAN 9784896292916

心のてのひらに

¥385

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2024/05/01

稲葉真弓さんの東日本大震災へのレクイエム詩集ですね。 稲葉真弓さん(1950ー2014)愛知県生まれ。詩人、小説家、大学教授。 この詩集は、『2014年八月十九日出版社に、稲葉真弓さんから書簡と原稿を受け取った。書簡には重篤な症状に触れながら、これらの原稿を一冊の詩集にまとめてほ...

稲葉真弓さんの東日本大震災へのレクイエム詩集ですね。 稲葉真弓さん(1950ー2014)愛知県生まれ。詩人、小説家、大学教授。 この詩集は、『2014年八月十九日出版社に、稲葉真弓さんから書簡と原稿を受け取った。書簡には重篤な症状に触れながら、これらの原稿を一冊の詩集にまとめてほしいとあった。』そして、2014年八月三十日に稲葉真弓さんは逝去されました。ですから、稲葉真弓さんの遺稿になります。 出版は2015年三月八日。三月八日は稲葉真弓さんの誕生日です。    シュポー 見えない列車  その夜 日本列島を長い長い列車が通りすぎた  鳥だけが はばたく 泥の大地  揺れ 揺れ続ける黒々とした地層を  つり革のない列車が 通りすぎた  行き先は だれにも見えなかった  海底の駅を過ぎ 汽車シュポー  青空の踏み切りを通り越し 汽車シュポー  たどりつかねばならぬのは  春の光に濡れた三月十一日 の 一秒前の世界  びょうびょうとレールは光る 塩水にまみれて  故郷と呼ばれた水没の地を疾走する  いましばらく あの駅を探さねば  どこかにあるはず ぬくぬくとした火を点す駅は  シュポー  すべてのわたしたち  を 乗せた 見えない列車が  あの日から 日本列島を走り続けている     受粉の日   花粉のように飛びましょう   どこまでもどこまでも   飛散と受粉の旅をつづけましょう   軽くて柔らかなお皿を抱えて   ええ どこまでも出前の旅をいたします   不妊の女たちのいる島   遊び続ける少年たちの   いつまでも暮れない空に   金色の花粉を降らせにいきましょう  愛のすり切れた二十一世紀の波打ち際  わたしたちの旅の道程は  虹のように喜びと悲しみの両岸へと  続いているではなかった  大きなクジラたちが殺され続けた深い湾は  まだ皿はからっぽのまま  なみなみとしたものを満たすために待たれている  手をつないでいきましょう  けっして幸福ではなかった父母や祖父母たちの  墓やクジラ碑    置き去りにしてきた動物の白骨たちよ  花をさした銃口を敵に捧げた若者のように  いまいちど  生き物の濁りのない受胎を夢見て  るいるいとした死の山脈をこえて往く  さあ わたしたちは  あした 白い皿に乗った  黄色い魔法の粉になるのですよ  未来を生きるための花の武器になるのですよ  悲しみを噛み締めながら、なかなか了解しにくい自己の内面の格闘を詩に託されています。 この詩集は稲葉真弓さんの鎮魂歌でもあるようです。 稲葉真弓さんはこの詩集の題名を『3.11の祈りが通じる 心のてのひらに納まるような一冊』としてほしいとの事だったようです。 いつまでも忘れない、心に留めていきたい、そんな願いを持ち続ける想いを受け止める詩集ですね。

Posted by ブクログ