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陰謀 史上最悪の偽書シオンのプロトコルの謎
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | いそっぷ社 |
発売年月日 | 2015/03/13 |
JAN | 9784900963658 |
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陰謀
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商品レビュー
4.5
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※このレビューにはネタバレを含みます
陰謀論を前に無力で立ち尽くす アメリカン・コミックスの歴史に詳しい方なら、ウィル・アイズナーの名は必ずご存知のことと思う。1940年、仮面のクライム・ファイターを主人公にしたシリーズ『ザ・スピリット』で大ヒットを飛ばしたアーチストだ。グラフィック・ノベルの創始者の一人でもあり、彼の業績にちなんだ「アイズナー賞」というものもある。 2005年に亡くなった彼の遺作となったのが、この『陰謀 史上最悪の偽書「シオンのプロトコル」の謎』である。 『シオンのプロトコル(議定書)』というのは、ユダヤ人指導者による世界征服計画を記したとされる書物。1905年にロシアで出版されたのを皮切りに、世界各国に訳され、ヒトラーやヘンリー・フォードにも大きな影響を与えた。しかし1921年になって、その内容がフランスの風刺作家モーリス・ジョリーが書いた『マキャベリとモンテスキューの地獄での対話』という本の剽窃であることが明らかになった。これは1864年、ナポレオン3世を攻撃するために書かれたフィクションで、ユダヤ人とは何の関係もなかったのだ。 だが、そうした真相が暴かれても、『プロトコル』は滅びなかった。 本書は『プロトコル』誕生の経緯から現代に至る影響を描いたグラフィック・ノベル。印象的なのは、どの時代の人も、『プロトコル』が捏造だという証拠が出るたびに「『プロトコル』はもうおしまいだ」と言うこと。本書の解説者で、1991年にノーマン・コーン『ユダヤ人世界征服陰謀の神話』(ダイナミックセラーズ)を訳した内田樹氏も、「コーンの研究書一冊で『プロトコル』問題にはけりがつくだろうと私は思っていた」と書いている。 そんなことはまったくなかった! とっくの昔に偽書だと暴かれた『プロトコル』が、21世紀になってもなお、世界中で出版されているのである。 中でも印象的なのは、作者のアイズナー自身がモデルのキャラクターが、反ユダヤ主義者のデモ隊に、『プロトコル』が偽書だということを説明するシーン。しかし彼らは「でもユダヤ人はこの本を利用して陰謀を企んだのかもしれない!」とか「たとえ偽書だとしても読むべきだわ。ユダヤ人の正体を明らかにしているんだもの!!」と言って耳を貸さない。ついには「ちょっと! あんたはユダヤ人の宣伝係なのかい?」「ははあ! あんたユダヤ人なんだな?」「さあ、行きましょう! 彼はユダヤ人なのよ!」と言って、見捨てて去ってゆく。後に力なく取り残されるアイズナー……(実際、彼は東欧系のユダヤ人である)。 日本でも、1980年代、ユダヤ陰謀本が大流行し、『プロトコル』を本気で紹介した本が何冊も出版された(本書の中にもその1冊が登場する)。僕も20年以上前、『トンデモ本の世界』(洋泉社/宝島文庫)の中でそれらのバカバカしさを取り上げたことがある。 最近はさすがに「ユダヤの陰謀」をストレートに唱える本は見かけなくなった。だが、それはべつに日本の出版界が良心に目覚めたからではない。反ユダヤ本が出るたびに、ユダヤ人団体が執拗に抗議を続けた結果である。その証拠に、「ユダヤの陰謀」を「フリーメーソンの陰謀」に衣替えしただけの本は何冊も出ているし、テレビでもフリーメーソン陰謀説を取り上げている番組がある。 また、ネット上でも、いまだに『プロトコル』を信じている日本人はいくらで見つかる。彼らは「『プロトコル』は偽書だが内容は真実だ」と主張するのが定番である。 どれほど証拠を挙げ、論理的に説いても、陰謀論は滅びない。世紀を超えて綿々と流れ続ける無知と偏見の大河を前に、僕らも作中のアイズナーと同じく、力なく立ち尽くすしかない。
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何を隠そう、私は「タツラー」。 つまり、「内田樹を熱心に読む人」。 だから本書は、「解説・内田樹」の文字がなければおそらく手にすることはなかったであろう書物、マンガ、陰謀論。 他の陰謀論関連書と一線を画す点は、本書が「なぜ陰謀論はなくならないのか?」との観点から、陰謀論を突き放し...
何を隠そう、私は「タツラー」。 つまり、「内田樹を熱心に読む人」。 だから本書は、「解説・内田樹」の文字がなければおそらく手にすることはなかったであろう書物、マンガ、陰謀論。 他の陰謀論関連書と一線を画す点は、本書が「なぜ陰謀論はなくならないのか?」との観点から、陰謀論を突き放しつつ接近して分析するという、適度な距離を保ちながら陰謀論の深層に迫っている点。なおかつ、マンガだから、親しみやすい。そして、読後にさわやかな絶望感を味わうのが、本書の最大の特徴。
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