ターシャ・テューダーの人形の世界

食野雅子(著者)

• 販売会社／発売会社: KADOKAWA
• 発売年月日: 2015/03/01
• JAN: 9784040674353

商品レビュー

2022/05/04

大人のお人形さん遊びの超の付く大先輩。

お人形さんもドレスも日用品のミニチュアもドールハウスも殆どゼロから自作、或いは家具職人のご子息セス氏の作。

凄い人形遊びをしながら本職の絵本作家として超一流のお仕事をされ、何人もお子さん達を育て上げたのです。
憧れる事すら出来ない、本当に凄い方です。
手作りばかりか遊び方も手が込んでいます。近所の幼い子供達を集めて人形劇を見せたり、お人形さんの結婚式を執り行ったり。

この方はもの凄くお人形さんに感情移入されていて、「言葉に出さなくても心に思えば人形に伝わる。」と言い切り、お人形さんに心が宿る様に主張されますが・・・結婚式迄出したお人形さんの夫婦をあっさりご自身の都合で離婚させ、自作のもっとご本人に魅力的な女性のお人形さんを男性のお人形さんと再婚させています。
また飽きてしまったのか破損させて修復不能になったのか老人人形の訃報を人形向け雑誌に書いて、始末しています。
離縁させられた女性のお人形さんは自宅２階の箪笥に放置。

案外身勝手でドライです。

この身勝手さ、ドライな所がその方の精神の健全性の証であると私は思っています。
そうでないと現実と妄想の区別が付かなくなり、精神を病んでしまうと思うのです。

もしお人形さんに心が宿るならば、ターシャが子供の頃から大切にしているお人形さん（ナイシー・メリンダ）はターシャに対して怒り心頭だと思います。

「何で私がイーサンの妹なのよぉ、ここの人形で私が一番キャリア長いのよ。人間のターシャより私の方がずっと年上よ。なんたってまだ小さくてピーピー泣いていたターシャのおもりしたのはこの私よ、私ターシャの保育士で、家庭教師だったのよ。それが何よ、随分と偉くなったわね。」

こんな感じでしょう。

それでもお人形さんに心が宿ると言うならば、オーナー様の脳にそれは宿るのだと思います。
脳をＰＣに例えればお人形さんの心はそれにインストールされたアプリです。女史の言う様に「心に思えば人形に伝わる。」のはアプリ間のデータのコピペと考えれば理解出来ます。

ただ人間は身勝手で、お人形さんの心＝アプリの内容を勝手にエディターで書き換え、更には不要になればゴミ箱行きにしてアンインストールです。これで人間の心は健全性を保てるのでしょう。

もし女史がまだご存命なら、私はもう一度大学に入り直して心理学を専攻して、女史を観察して見たかったですね。お人形さん遊びをする大人の面白いデータが得られたかも知れません。

私達一般の人形愛好家はお人形さんを恐れる事は無いと思います。そしてお人形さんを大切にしましょう。
お人形さんを大切にする事はあなたご自身を大切にする事に他ならないからです。
博物館の高級なお人形さんは小奇麗でも寂しそうです。オーナー様に可愛がられているお人形さんは安価な量産品でも幸せそうに見えます。

それはお洋服とか小道具とかヘアスタイルとか色々とオーナー様の手が入っているからだと私は思っています。

お人形さんは何も食べられませんが新しいお洋服を着せてあげると嬉しそうに見えます。
着せ替え人形はお洋服が売れる様に最初からそうデザインされているのかも知れません。それでもお人形さんを可愛がりましょう。髪を優しく櫛といてあげるだけで自分の心が安らぎます。