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一葉の震え 「雨」ほか、南海の小島にまつわる短編集
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 近代文藝社 |
| 発売年月日 | 2015/01/01 |
| JAN | 9784773379679 |
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一葉の震え
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商品レビュー
5
1件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この本を読む前に先ず新潮文庫「雨・赤毛 ── モーム短篇集Ⅰ」(中野好夫訳)を読んで、その強烈な内容に驚くとともに間違いなく傑作だと思いました。ただ、訳が少し古いように感じたので、新訳のこの本で再読することにしました。 中野氏の訳にはところどころに古い言い回しがあって戸惑うところがあるのに対して、小牟田康彦氏の訳は現代的です。その一方で、中野訳が原作の意を酌んだ巧みな表現になっている部分について小牟田訳はちょっとこなれない表現だったりします。また、格調の高さという点でも中野訳が一段上かもしれません。従って、翻訳の出来ばえという点では一長一短だと思いました(自分の英語力を棚に上げこんなことを書くのは不遜極まりないのですが……)。 しかし本書の一番素晴らしい点は、サントブーヴの詩を引用したエピグラムに始まり短いエピローグに終わるこの短篇集の全体を、完成度の極めて高い一つの作品として一冊に収めているということだと思います。 モームはこの作品で、登場人物を自由自在に動かし、その運命を決定していきます。そして登場人物だけでなく読者も、モームの手のひらの上でみごとに操られてしまいます。あまりの苦さと辛辣さに好きになれないという人もいるでしょう。「見たくもない事実を見せられた」といって怒り出す人さえいるかもしれません。でも、私はとても興味深く読みました。 モームの作品はストーリーが面白いことに加えて、人間というものを実によく観て巧みに描いているなあと思います。以下、一篇ごとの感想です。 * * * 太平洋 ★4 いわばこの短篇集のプロローグです。 全篇を読み終えてからこの部分を再読すると、実に深い意味が込められた文章だということが分かります。美しい自然の景色でさえここまで皮肉に眺められる作者だからこそ、人の暮らしのあれこれをこんなにも残酷に描ききれるのだと思います。 マッキントッシュ ★5 この物語でモームは、マッキントッシュとウォーカーという性格が対照的な二人の人物を登場させ、見事にからめあわせて罠に嵌め、情け容赦なく悲劇的な結末に突き落としてしまいます。ここまでやりますか? ウォーカーは嫌な奴だけれど、一方で島民の多くに愛されている。このあたりの人間というものの複雑さを、モームは実に巧みに描いていると思います。 エドワード・バーナードの凋落 ★5 “僕たちは人と人の区別をあまりにうるさくしすぎるのではないか。最善の人間も罪人であり、最悪の人でも聖者なのかもしれない” ── これってこの短篇集全体で繰り返し示される人間観ですね。「月と六ペンス」でのストリックランドに対する作者の眼差しとも共通しています。 イザベルがため息まじりに漏らす最後のひと言は、作者からの強烈な皮肉だと感じました。本当にかわいそうな人間はだれなのか? レッド ★5 “今になって振り返り、レッドとサリーのあの短くも熱烈な愛情生活に思いをはせると、彼らの愛がいまだ絶頂にあったと思える時期に引き裂かれたという無情な運命に二人はむしろ感謝すべきじゃないかと思えてくる。たしかに苦しんだが、美しい苦しみだった。二人は愛の真実の悲劇を見なくてすんだのだ” ── 美しい島でのロマンスを背景に語られるニールソンのこの言葉、そしてその後に示されるおどろきの真実。本当に残酷で辛辣です。 ところで、ニールソンに対する船長の言葉遣いが、中野訳では控えめで丁寧なのに対して小牟田訳ではぞんざいです。ここは小牟田訳の方が船長のイメージにぴったりだと思いました。 小川の淵 ★3 これはちょっと、救いようのない話でした。この短篇集の中では珍しく、結末にたいした捻りがありません。ローソンが破滅に向かっていく姿が余さず描かれています。しかも、その過程がいかにも自然で、必然性を感じさせます。 ホノルル ★4 他の作品に比べればちょっと小ぶり。船長の不思議な体験が描かれています。そしてそれに続く結末があっけなくシニカルです。 雨 ★∞ 絶え間なく降る雨を通奏低音とする鬱屈した空気の中で、人間の本性が引き起こすとんでもない悲劇を描いています。「とても面白かった」という感想は、ちょっと不謹慎でしょうか? 結末がどんでん返しの作品って、普通は一度読んでネタバレしたら読み返す気がしなくなるものですが、「雨」はもう一度読みたくなります。なぜ読み返したくなるのか? 恐いもの見たさなのかもしれません。 エピローグ ★5 最後の最後まで残酷で皮肉たっぷりです!
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