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堕ちたる者の書 パラディスの秘録 創元推理文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 2015/01/01 |
JAN | 9784488585044 |
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堕ちたる者の書
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堕ちたる者の書
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頽廃と背徳の都パラディスを舞台にした中編3篇から成る「堕ちたる者の書」。逃げ惑う男から詩人がもらった血のように赤いスカラベの指輪から始まる吸血譚「紅に染められ」、美貌の役者が魅入られた魔女ティモニーとは‥「青の帝国」、そして傑作「黃の殺意」。この「黃の殺意」だけでも読んでほしい!...
頽廃と背徳の都パラディスを舞台にした中編3篇から成る「堕ちたる者の書」。逃げ惑う男から詩人がもらった血のように赤いスカラベの指輪から始まる吸血譚「紅に染められ」、美貌の役者が魅入られた魔女ティモニーとは‥「青の帝国」、そして傑作「黃の殺意」。この「黃の殺意」だけでも読んでほしい! 義父に冷たく扱われ強姦までされた20歳の美しいジュアニーヌは義兄弟にも襲われそうになると、反撃して義弟を殺して家出する。唯一仲の良かった義弟ピエールが画家の修行をしているパラディスへ。しかしピエールは昔のピエールではなかった。尼僧院へ逃げ込んだジュニアーヌは、昼は尼僧院の雑用をするが夜になると少年の姿になってゴロツキたちを率いて悪行のかぎりを尽す。悪魔崇拝の話だ。 裏切られ失意のジュニアーヌと夜に姿を変える少年ジュアンの対比がはっきりと描かれ、ジュニアーヌが悲しみゆえに心のバランスを崩しているのかと思いきや、すべてを見通す悪魔が見え隠れする。この地には男と女の違いはない。どちらもカードの表裏でしかない。聖なる神と邪なる悪魔も同様に表と裏。確かなものは何ひとつない、すべてがあやふやで危ういパラディスの空気感がよく描かれている。
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・タニス・リー「墜ちたる者の書」(創元推理文庫)は 「パラディスの秘録」と題された一連の作品の(邦訳)3冊目に当たる。「紅に染められ」「黄の殺意」「青の帝国」の3中編を収める。これらの題名、何やら信号機めいてゐるが、原題にcrimson、saffron、azureとあることからす...
・タニス・リー「墜ちたる者の書」(創元推理文庫)は 「パラディスの秘録」と題された一連の作品の(邦訳)3冊目に当たる。「紅に染められ」「黄の殺意」「青の帝国」の3中編を収める。これらの題名、何やら信号機めいてゐるが、原題にcrimson、saffron、azureとあることからすれば、これは訳者による恣意的な題名ではなささうで、よく見れ ば、むしろ、いづれも原題に忠実な邦題であつて、例へば“Stained with Crimson”は正に直訳であらうし、“Malice in Saffron”も“Empires of Azure”も同じく直訳であらう。色名が微妙に違ひはしても、題名は簡潔を旨とする、サフラン色よりも黄と言ひ切る方が良い。物語からしても、ある意 味、どぎつい印象の漢字の黄の方が良い。カバーにかうある、「退廃と背徳の都パラディス。この地において男女の別に、いかなる意味があろうか。」さう、正にかういふ物語である。タニス・リーは赤青黄をイメージして物語を書いたのであらう。個人的には色違ひではないかと思つたりもするのだが……。 ・本書3中編の主人公を言はば極北のイメージとしたのが次に部分ではないか。「テュアモンは初めから二重花。女の衣類が床に横たわる今、持つ 雰囲気は断固として男のそれ、姿勢も落ち着きもまた。にもかかわらずきらめく髪の頭巾の下にある面は乙女のもの、顔と唇に感じられる尊大もほんの少年のそ れにすぎず、頸すじと、やはり少年めいた肩と腕と硬い林檎の乳房はー少女。(中略)テュアモンは両性具有であった。全ての点で男であり女。少女の顔と乳房、男の本質。双方の股間。」(「青の帝国」395頁)テュアモンは古代エジプトの魔道師、男として、女として生きた。いや生きてゐる。比喩的にではなく現実にである。主人公ルイは女としても生きたが両性具有ではない。「肉体の上ではルイは男だった。(中略)原理の点では 女。」(394頁)他の主人公も同様、男として、女して生きても男は男、女は女であつた。「紅に染められ」のサン・ジャンは途中から女に返つた。違和感は なささうである。「黄の殺意」のジュアニーヌは男のジュアンとしてある時でも女を意識してゐた。といふより、ジュアニーヌはさうしなければ世間を渡れなか つたと言ふべきではないか。生きる知恵で、女子修道院で生活し、そこから抜け出して男として悪事を働いたのではないか。ジュアニーヌは本質的に女であつ た。3人とも両性具有ではない。それでもその美しさゆゑに、3人とも両性具有のイメージがふさはしい。いやたぶん、タニス・リーは両性具有、ヘルマフロディトゥスかアンドロギュヌスか、そんなイメージを抱いてこの3人の物語を書いた。それがこのパラディスといふ町にふさはしいからである。「この地におい て男女の別に、いかなる意味があろうか。」さう、かういふことである。これはまた本書に実に多くのキリスト教的な背徳、背教のイメージを散りばめることになる。ジュアニーヌが女子修道院に住むのもその一つだが、その他にいくつあるか数知れない。「紅の染められ」の最後、「銀の十字架の見下ろす広間」 (161頁)である。そこで主人公は死ぬらしい。殺されるのである。これはどうやら吸血鬼譚であるらしい。吸血鬼兄妹に魅せられた者の物語である。主人公は両性具有を指向した。そして美しい。さういふ物語世界なのである、タニス・リーの世界は、パラディスは。 そして決定的なのは、「タニス・リーはエロスの作家である。」(萩原香「解説」398頁)、この一事である。物語のすべてはここに収斂し集約される。
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献本でいただいた1冊、久々のタニス・リーさんです。 時代は中世ヨーロッパ、舞台は架空の都“パラディス”。 分類はファンタジーとなるのでしょうか、、 中編が3つ、薄墨に隠されたような物語たち、です。 1つは男女の性が混雑としたままに、背徳とそして、 生と死の境目を行ったり来たり...
献本でいただいた1冊、久々のタニス・リーさんです。 時代は中世ヨーロッパ、舞台は架空の都“パラディス”。 分類はファンタジーとなるのでしょうか、、 中編が3つ、薄墨に隠されたような物語たち、です。 1つは男女の性が混雑としたままに、背徳とそして、 生と死の境目を行ったり来たりする「紅に染められ」。 1つは昼と夜で2つの貌のみならず、 2つの性別をも使い分ける「黄の殺意」。 1つは性差をも超える美貌を持つ役者が魅入られた、 この世ならぬ存在を描いた「青の帝国」 共通しているのはいずれも、、 “耽美”と“倒錯”、“退廃”と“背徳”、 そんなフレーズに彩られた物語であること。 読んでいるとどこか、薄闇の中を分け入っていくような、 そんな夢うつつにくるまれていくような感じになります。 読み手は正直選ぶかな、と。 決して現実ではありえない物語、、 でも心奥ではもしかして求めている、のかもしれない物語。 それは性と生、そして死との狭間が曖昧で、 時として行きつ戻りつするからかも、知れません。 この世ではないどこか、その世界に耽溺したくなる、そんな1冊。
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