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奈良県の百年 県民100年史29

鈴木良(編者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 山川出版社
発売年月日 1985/09/05
JAN 9784634272903

奈良県の百年

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2019/07/16

1985年刊行。江戸末期からの奈良県の歴史を各分野の歴史からひも解く一冊。 名前のざっくり感に反して、読み手を選ぶ一冊。それは「奈良県」という枠に興味を持つ人が案外少ない、という事実を本を通してひも解く一冊でもあるから。 本書が「奈良というのは県の最北部にある奈良市付近のこと...

1985年刊行。江戸末期からの奈良県の歴史を各分野の歴史からひも解く一冊。 名前のざっくり感に反して、読み手を選ぶ一冊。それは「奈良県」という枠に興味を持つ人が案外少ない、という事実を本を通してひも解く一冊でもあるから。 本書が「奈良というのは県の最北部にある奈良市付近のことで、県全体をさすものではない(p.1)」というくだりから始まるのがその際たる例。 奈良県を地形的にみれば四方を山に囲まれ、わかりやすく区切られている地域なのですが、庶民レベルでは「大字(ダイジと発音する)」単位の「堅い農民どうしのむすびつき(p.4)」が優先され、それが水争いや差別に起因する争闘で常に洗い出される地域。県単位の視点よりも隣村との争いの方が重要視されてしまう。 (極端な話、”奈良県の政治”自体が”登大路”という村で食ってる人の中での争い、みたいなところが多分にある) そんなわけで、地元民でないとわからない細かい「村」の関係を理解しつつ、「奈良県」と付き合いを持たなければならない人以外には、どう読み取ったらいいのかわからない一冊。逆にそういう立場の人からすると、腑に落ちる記述が山ほどある本だった。 農業分野で興味深かったのは、昭和初期までは全国一の土地生産性を誇った農業生産を支えたのは「金肥の多投と高い施肥技術および優良品種の採用(p.70)」であるという記述。”ヒトとカネ”を大量投入してはじめて成り立つ農業が基本にある。 一方で「家畜による耕耘や揚水機・脱穀機などの採用によって労働生産性が上昇するのは、ようやく大正後期に入ってから(p.70)」という”モノ”の軽視も現在の奈良県に引き継がれている、という印象も受ける。 また、”ヒト”は使うがその名を県内では上げない、というのも興味深い。例えば稲の品種改良で名を挙げられている中村直一(1819-1882)も、その名を認めたのは「政府」や「勧業博覧会」。「遠く秋田県や宮城県で農事改良を指導」するまでに名を上げつつも、奈良県では「奈良県勧業下用掛・奈良県庶務課雇として、植物試作掛」とあまり大切にされた気配がない(p.33-35)。 奈良県出身の全国区有名人は結構多いのに、名を上げるのは京都・大阪・東京、というパターンは今も継承されている。”国>大字>奈良県”とでもいうべき力関係を、歴史資料を通して実感させられる一冊。 ”それなのに”、なのか”そうだから”、なのかはわからないのですが、だからこそ強くなければならない、負けてはならない、という意識も強いんだな、とも感じた。 それを強く感じたのは、大正時代にあった学校での差別発言に起因する事案を取り上げたくだり。 差別発言に対する対応について、学校が責任のがれに終始したので、差別された側の区民百数十名が「隊伍を整え喇叭を吹奏しつつ」学校に乗り込む、それを差別した生徒のいる区長が大声で制止したので「区長を袋叩きにし」、地域の顔役が出てきても拒絶する(p.139-140)。 別に同じようなことが今の奈良県で起こるわけではないのですが、”個人”なり”家”なり”村”が強くなければいけない、という逼迫感のようなものは、奈良県では特に強く感じるし、それゆえに”家”や”村”からの承認を求める意識が強くてそれがしがらみになってるようにも感じる。またその”強さ”の定義や基準が多様でよその人間にはつかみずらいことも多い。 これらも歴史を鑑みると、うなづけるところがある。 本書の最後で取り上げられていた過疎化は、刊行後三十余年を過ぎて著しく進行。 30年前の歴史本がそのまま通用する、それが大和の国でもっとも長い歴史を紡いできた奈良県らしさなのかな、という風に感じた一冊だった。

Posted by ブクログ

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