ミロ 新潮美術文庫48

ミロ(その他), 岡田隆彦(その他)

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 1974/11/01
• JAN: 9784106014482

商品レビュー

2022/03/29

　2022年3月28日、ずっと行きたかった「ミロ展　-日本を夢見て-」へ行けることになった。美術館に行くこと時代が非常に久しぶりで、数日前から心躍る。生で絵画鑑賞したあとは気持ちが昂って、つい図録やらグッズやらをバカスカ買ってしまう傾向があるので、過去の反省を活かして家にあったミロ関係の本や雑誌を持参。会場入り口でチケットを買い、まずは併設のカフェへ。展覧会タイアップメニューのパエリアを食べ、コーヒーを嗜みながら、持っていった本たちを一通り眺める。

　この本は、なんと昭和49年発行。わたしが生まれるより前に母が買っていたものだ。「教養」という謎のパワーワードに取り憑かれていた彼女は、美術になど一ミリも興味がなかった中学生くらいのわたしにこういう本を次々と渡しては無視されてブチギレる、という謎の行動を繰り返していた。何せ当時のわたしは「明星」を読んでジャニーズ事務所にファンレターを送らなくてはなからなかった。ほとんど使命である。だからミロとか知らないし、何このわけわかんないこちゃこちゃした絵は、とすべからく無視していた。勿体無い。そんな曰く付きのこの本を、発行から約30年以上が経ってからついに母から受け継いで、大喜びで自ら繰り返し読んでいる。いろいろな時代の作品が載っていて、その一つ一つにわかりやすい解説が添えられている。巻尾には岡田隆彦氏の論文があり、ここでさらにいくつかの作品と、ミロの人生の系譜に触れることができる。なんと有意義！母よありがとうそしてごめん！反省したわたしはこの新潮美術文庫シリーズのピカソやらマグリットやら、他の巻もバカスカと購入したのであった。

　さて、持参した三冊を読み終え、このようにわたしは既にいろいろな関連書籍を持っているのだ、新しいのを買ってももう置く場所がないのだ、、、！と自分に言い聞かせながら、展示会場へ向かう。

　展覧会に行くと毎回必ずオーディオガイドを借りる。絵を見るのは好きだけれど、絵を解釈したり、そこから自発的に何かを感じ取ることは苦手。以前、上野で開催された『怖い絵展』のように、明らかに何か訴えかけてくるテーマがあればまだわかりやすいけれど（とは言え、『怖い絵展』の作品も、時代背景や、作者の意図がわかって初めて「おお怖い」となる作品が多かった）、シュルレアリスムの作品はなかなか難しい。何を伝えたいのか？何のモチーフなのか？考えれば考えるほど、あれかも、これかも、とどんどん想像が膨らんでいって、最終的にわけがわからなくなるか、作者の意図とはかけ離れた独りよがりな結論に突っ走ってしまっているような気がしてくる。そういう、着地点を決めない自由な楽しみ方もいいのかもしれないけれど、好きな画家の作品であればあるほど、本来何を描こうとして、何を伝えようとしていたのかをやはり知りたいな、とは思う。

　音声ガイドはピックアップされたいくつかの作品についての解説がメイン。どんな時代背景の中で描かれたか、当時ミロがどんなものに興味を持って、どんな人々と親交を深めていたか。実際のミロの発言がいくつか引用されていたから、作品に向けた想いが想像できて有意義だった。

　ゆっくりと見て周り、ミュージアムショップで買い物を済ませ（結局またなんか買ってるよ）、会場を後にする。振り返ってみると、今回の展覧会の楽しみ方は我ながらなかなかよかったと思う。家にある書籍を読んで予習し、鑑賞中は音声ガイドで情報を得つつ、ガイドがない作品については自由に自分の想像力を走らせる。余計な買い物はせず、帰り道にまた持参した本で余韻に浸る。うん、いいじゃないの。ここのところなかなか美術展へ行くような心の余裕のない日々だったけれど、本当に興味がある展覧会に絞って、是非また足を運ぼうと思う。

2013/04/02

(1975.12.23読了)(1975.06.21購入)

☆関連図書(既読)
「ターナー」中原佑介著、新潮美術文庫、1975.02.25
「フェルメール」黒江光彦著、新潮美術文庫、1975.04.25
「モロー」竹本忠雄著、新潮美術文庫、1975.05.25
「シャルダン」黒江光彦著、新潮美術文庫、1975.11.25