海うそ

梨木香歩(著者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店
• 発売年月日: 2014/04/11
• JAN: 9784000222273

商品レビュー

2025/01/11

昭和初期の遅島をフィールドワークした人文地理学者、秋野を主人公とした物語。盆栽的な島における廃仏毀釈や平家の落人集落、モノミミと呼ばれる民間信仰の話が折り合わされる。喪失の物語にも見えるが、空間的・時間的多様性とその移ろい、そこに入り切ることができない寂寥感を描いたようにも見える。二つ家の解釈が何度も挟まれるが、この二つ家は何を意図してこの物語に組み込まれたのか、考えがまとまらない。

2024/08/06

梨木香歩さんの著作、初めて読みました。
読み始めはなんだか難しい人類学、民俗学のような話が始まったぞと思っていましたが、読み進めるとまるで梶井君と秋野と共に、遅島探索をしているかのような。そんな風でした。

フィクションであることを時折忘れてしまうほど詳細に書き込まれていました。とても楽しめた。

そして「五十年の後」を読み終えると、まるでそれまでの章がこの章のための前日譚だったかのような充足感です。素敵な文章でした。

2024/05/07

するする読める、というより立ち止まりながら読んで、ちょっと山の空気や水の匂いを想像しながら読み進めていく、そういう本だった。
最後には五十年の時を経た姿も。
単なる伝記や架空の地理の物語とならずに、落とし所も小説としてしっかりついているところがまた味わい深い。
いい本です。架空のストーリーだけど、田舎を旅することがあれば、きっと良いお供になると思う。