秋の雪 イレーヌ・ネミロフスキー短篇集

イレーヌ・ネミロフスキー(著者), 芝盛行(訳者)

• 販売会社／発売会社: 未知谷
• 発売年月日: 2014/03/19
• JAN: 9784896424379

商品レビュー

2022/04/12

ネミロフスキーは、『フランス組曲』のような大作だけでなく、短編も見事だ。短編集『秋の雪』の中に「腹心の友」という身近な小説がある。内容はサイコパス的な少々恐ろしい女性の話なのだが、これが静かに昔語りをする様が素敵で、主人公の頂点をすぎた指揮者と同じ視点で耳を傾けてしまうという筆致、とにかく凄い。こちらはナチスが影響力が増しつつある時期に書かれ、実名で発表できない為に偽名で出版された。

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2019/02/03

すーごいな。こないだ読んだ「処女たち」よりももっと濃厚で若い血潮がたぎっている。刀職人が鉄を火に入れ、元は漆黒なはずな鉄が真っ赤にたぎっているようだ。若くして大人になることを夢見、具体的にどうするのが正解かよくわからず、とりあえず自分の心の置き場をわからなくする。そういう態度を大人ははしこく見つけ、とがめる。ハリネズミでビーチボールをするような危うさ。そういう繊細な心の動きを、読者にわざとらしさや稚拙さを感じさせずに、新鮮なまま提供する見事な筆力。彼女の情熱が文章の中に生きてる。
それを味わえる至福。