惑星詩集

松本賀久子(著者)

• 販売会社／発売会社: 土曜美術社出版販売
• 発売年月日: 2013/05/30
• JAN: 9784812020432

商品レビュー

2023/06/03

編集中
引用した作品もとは縦書きです。また、スマホできる限度で表示しています。

恐竜の背骨の上で
ニューヨークの博物館　 化石になった
大型の　草食恐竜の骨格の上に
透明な　プラスチックの橋が架かっていて
人はその上を歩き
自分の足で　感じることができた
大型草食恐竜の　その大きさを
四歳の女の子が　一人
片手に持った　キャンディの棒のとも忘れて
橋の上を　行ったり来たりしながら
オーッ、オーッと驚きの声を上げていた

あれから半年
私も　気がつくと
時折　恐竜の背骨の上に居て
平均台の上を歩くように　両手を開いて歩いた
恐竜の背骨の上で
ロッキング・チェアに座ってパイプをふかしながらジャパン・タイムズの一面を読んだ
恐竜の背骨の上で
洗濯物を干して　梅雨が早く開ければ
いいなと思った
恐竜の背骨の上で
ドラッグストアのアカウンターに立って
ゆらゆら　揺れながらお客様の買った「言い分」を聞　いた
日焼け後のヒリヒリと
水虫に使える薬はありますか

どうもそういう薬ありません
これとこれと 使い分けて頂かないと
よく見れば
お客様も恐竜の背骨の上にいた

私は踊る 休日の午後に 恐竜の背骨の上で
背骨を見せてくれている恐竜に
立派な姿を後世に残せて幸運だね　と
言いながら
絶滅しても　尊敬されているお前たちは
偉大だよね　 と
つぶやきながら

今も　私は恐竜の背骨の上に居て
何もせずパイプなどふかしながら
カモミールティーを飲んで
梅雨が明けて　晴れた空の下にひるがえる
洗濯物を　窓の外にボンヤリと見ている
人類は　滅びた後に
何も　残せないかもしれないけれど
恐竜の背骨の上で　パイプでもふかしつつ
じっくりと味わえる時間

まあ
少しばかり物を　考えてみる時間ならば
まだありそうだ
から