いけない贈り物 コスミック文庫

庵乃音人(著者)

• 販売会社／発売会社: コスミック出版
• 発売年月日: 2014/01/20
• JAN: 9784774726984

商品レビュー

2014/03/26

作者らしいテーマと題材に彩られた短編集

[ＤＳＫ]

作者初の短編集。様々な状況や設定で各話は始まるが、想いを成就し切れないやるせなさや切なさを湛えた男女の織り成すドラマが限られた頁の中に凝縮されており、最終的には作者らしいテイストに仕上がっている全７編である。

・家政婦の恋　「アサヒ芸能」2012年１月19日号
・獣の時間　　「特選小説」　2011年５月号　『熟れ尻物語』を改題
・教え子　　　「特選小説」　2010年10月号
・淫らな里帰り「特選小説」　2012年２月号
・たまらない　「特選小説」　2010年４月号
・三角関係　　「特選小説」　2013年８月号
・贈り物　　　「特選小説」　2012年９月号

概ね４０頁前後の作品群にあって『家政婦の恋』だけは１４頁の小品である。切ない不倫劇を主軸としつつも相姦や調教、さらには回春といった幅広さがある中でストレートに進む話があれば紆余曲折を経る物語もあり、中には「そうキタか」と思わず唸ってしまうような捻りが見事に利いている展開もあって驚かされる。とりわけ終わりの２編は、その設定や展開の妙が冴え渡っており、どんでん返しのごとく二転三転するクライマックスはスリリングですらあった。この２作品をトリと大トリに配置したことが本作全体の読後感の向上に寄与したと言えるだろう。また、初出年月の新しい作品ほど物語として上質にも感じられたため、僭越な物言いで恐縮ながら作者の成長と今後の伸びしろをも感じた次第である。

官能面においてはさすがに短編としての限界は感じられるものの、ヒロインの容姿、あるいは仕種や振る舞いといった描写がマッチした作品ではなかなかの興奮も味わえる。特に、亡妻に瓜二つな嫁と関係を結ぶ『贈り物』で見られた、嫁の艶姿を亡妻に重ねる描写にはダブルの破壊力があって実に良かった。この表現方法には新味を感じたので今後の作品でも姿を変えて再登場させていただきたいものである。