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ディア・ライフ
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アリス・マンロー(著者), 小竹由美子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2013/12/09
JAN 9784105901066

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商品レビュー

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2023/09/24

 本書を知ったのは、「母の友2023年8月号」の特集で、作家の「温又柔」さんが、『自分が世界にしっくりと馴染んでないような、疎外感を覚えたときに読む、呼吸が深くなる本』の一冊として紹介されていたのが、きっかけでした。  短篇小説って、単純に長篇小説よりも限られた、短いページ数...

 本書を知ったのは、「母の友2023年8月号」の特集で、作家の「温又柔」さんが、『自分が世界にしっくりと馴染んでないような、疎外感を覚えたときに読む、呼吸が深くなる本』の一冊として紹介されていたのが、きっかけでした。  短篇小説って、単純に長篇小説よりも限られた、短いページ数で、比較的、簡単に書けるのではなんて思っていたけれど、そんな浅い思い込みを恥じたいくらいに実感させられたのは、それを書ける人の方が、様々な人生模様を我が事のように深く感じ入ることが出来る上に、様々な彩りがなされた自分自身の人生も作品の味として活かせることから、絶対的な決めつけ方をしない、多様な思考法を持つことの出来る方なのではないかということで、もしかしたら、温さんもそこに呼吸が深くなる要因があったのではと思われる。  「アリス・マンロー」は、2013年にカナダ人初の『ノーベル文学賞』を受賞されたが、その人生は、パーキンソン病に苦しむ母の代わりに12歳のときから家事を担い、若くして結婚して22歳で母親となり、4人の子を産み育て(1人は生後すぐに亡くしている)、子どもたちを昼寝させている間にタイプライターに向かい、掃除洗濯をしながら物語の構想を練り、様々な世代の様々な女たちの人生を主な素材として、ひたすら短篇という形式を磨き上げてきたそうで(以上、訳者「小竹由美子」さんのあとがきより)、そうした大変さを経てきているのだが、本書に於ける自伝的連作の中にも書かれているように、『不幸せなものとして記憶していない』のであり、ここに私は、ひとつ注目したいものを感じた。  厳密にそれは、母が病に苦しむ時期だったのだが、別にそこだけが不幸せだったとは思えず、学校ではその時代的背景による、苛めに近い苦痛を感じた、その印象が最悪であったことや、心乱されて寝つきが悪くなった、『わたしは自分ではなかった』時期には、父からの言葉により、『嘲りも警告もなしに、わたしたちの暮らしていた世界に落ち着かせてくれた』と感謝することが出来たが、おそらく今の時代だったら、病院に連れて行かれていたのかもしれない。  しかし、そうしなくても良かった場合もあることを、ここでは実感させられながら、こんな父にも問題点があることも当然書かれており、要するに、それが人間であり、人生なんだということではないか、幸せか不幸せかを自分で判断するのも、ものの見方や考え方次第で変わるのではないかということではないかと私は思い、人間は神のように絶対的存在ではないからこそ、絶対的なことはないであろう世界に、私たちは生きているのだと思えたのである。  そして、そんな思いは、自伝的連作以外の短篇からも感じさせられ、それは「日本に届く」の、当時ではその存在自体が珍しく、立場も小さかったであろう、女流詩人グレタの、あるパーティーで最初に感じた、誰からも相手にされない孤独感から、 『この不快さについての理論を組み立ててしまうと、彼女は気分が軽くなり、誰かが話しかけてくれようがくれまいがさほど気にならなくなった』 と、その柵みも自分次第で軽く逸脱してしまうことや(ちなみにこのエピソード、メインストーリーと殆ど関係ない事から、マンローの物語の豊潤さが実感出来ると思う)、「ドリー」の、自分達が死んだときに備えてやるべき事を話し合う、フランクリン(83歳)と私(71歳)夫婦の状況に於いて、私が感じた、 『わたしたちの人生にはもう何も起こらないという思い込み』 が、見事に覆された、その過去から降って湧いたような驚愕の展開には、年齢など関係ない人生の妙味を思わせる、そんな中でも『僕たちには喧嘩してる余裕なんかないんだ』という、彼の台詞には、物語を経た上で読むと、人生と共に深まった二人の愛情による感動を覚えながらも、最後の最後には、二人の価値観の違いを如実に表して終わるという、その縦横無尽さに振り回される爽快感に酔いしれながらも実感したのは、人間の持つ自由で多様なその存在感の確立であり、こうしたところにも、人間って、人生って、もっと色々あって多様であっても良いんだなと感じさせられられた。  しかも、本書の舞台は、現代だけに留まらず、1940年代から様々であることに(一つの短篇の中で時代が移り変わるものもあり)、尚更、勇気づけられて、たとえこの先、私が世界に馴染んでないような疎外感を覚えたとしても、それはものの見方や考え方次第なんだということを改めて教えてくれたし、自伝的連作を除いても10編ある、マンローの物語の、喜怒哀楽含めた多様な人生を語る、その豊潤な言葉たちは、きっと何度も読み返すことで、また違った味わいを感じられるのだろうと思うと、それが返却日の為に叶わないことが、唯々残念である。

Posted by ブクログ

2022/04/10

なかなか読みづらいというか不親切に感じるところもあったが、そのあたりをなんとか踏ん張って読み進めると、意外にも多様な女の人生がじわりと広がっていくような読みごたえがあって、ああ女の作家だ、と実感した。女たちの胸の奥に確かな欲望が息づいているところが、いい。「砂利」は結局今思い返し...

なかなか読みづらいというか不親切に感じるところもあったが、そのあたりをなんとか踏ん張って読み進めると、意外にも多様な女の人生がじわりと広がっていくような読みごたえがあって、ああ女の作家だ、と実感した。女たちの胸の奥に確かな欲望が息づいているところが、いい。「砂利」は結局今思い返してもどう処理すればいいのか分からない悲劇を題材にするが、こういう取り返しのつかない「どうしたら良かったのか」を扱う作品に私はいつも弱い。そして「声」、よかった。男たちの柔らかで甘やかな声に憧れと欲望を抱く少女。男に対する女の一面的ではない熱情。

Posted by ブクログ

2019/03/02

去年の終わり、自分へのクリスマスプレゼントを何にしようか考えたすえ、 「そうだ、どれでも好きな海外文学の単行本を一冊、買っていいことにしよう!」 と思い立ち、本屋さんへ。 本当は、いちいち決心しないでも買いたいところですが、私にとっては、単行本、しかも、海外文学ともなれば、ちょっ...

去年の終わり、自分へのクリスマスプレゼントを何にしようか考えたすえ、 「そうだ、どれでも好きな海外文学の単行本を一冊、買っていいことにしよう!」 と思い立ち、本屋さんへ。 本当は、いちいち決心しないでも買いたいところですが、私にとっては、単行本、しかも、海外文学ともなれば、ちょっとした贅沢品なのであります。 あれこれ迷ってぐるぐると売り場を歩き回り、最終的にクリスマスリースのあしらわれた美しい表紙にひと目惚れして、こちらの一冊に決定。 本書は、1931年カナダ生まれの作家、アリス・マンローによる短編小説集。 マンローは2013年にノーベル文学賞、2009年に国際ブッカー賞を受賞しています。 ひととおり読み終わった結論としては、本書は、最後に収録されている「訳者のあとがき」を読んでから、読むのがおすすめです。 特に、私みたいに、そんなに海外文学はたくさん読んだことがないんだけど興味がある、とか、マンローという作家さんの作品を読むのが初めて、という方は。 というのも、冒頭の「日本に届く」をはじめとする4編目くらいまでをまず読んで感じたのは、「何だこれは!?」という戸惑いで。 基本的に、描かれているのは夏休みを夫と別に過ごすことになった母娘、児童のためのサナトリウムで教職につくことになった女性教師、小さな街で夜勤巡査として働く男性など、ごく平凡な人々で、文章もとりたてて難しい言葉が並ぶわけではありません。 いっぽう、はっきり言葉にされるわけではありませんが、読み進めていくとそこに、わかりあえない夫婦関係、突然の結婚の破談、配偶者の重い病気と死、家庭内の性的虐待など、非常に厳しい現実があることが浮かび上がってきます。 そして、夫と妻、母と子といったごく身近な人間関係も、決して密なものとしては描かれず、分かり合えなさと孤独を抱えており。 それが作品中で解決されるわけでもなく、彼らは一見淡々と日々を過ごし、話が終わる。 時々、映画や小説で「そして10年の歳月が流れた」という言葉とともに、作中の時間が経過することがありますよね。 本書ではそういった言葉は使わずに、印象として1ページくらいで40年ほど人生が一気に展開する場面があり、ぼーっと読んでいると「え、なになに!? 今のどういうこと??」と慌てて読み返すことになります。 「訳者のあとがき」では、そうしたマンロー作品の特徴がとてもわかりやすく説明されているので、読むことでよりそれぞれの話の面白みが味わえるようになります。 戸惑いに耐えて(?)読み進んでいくと、いつしか短い数十ページの中で、凝縮された人生が静かに、時にダイナミックに展開する味わいが癖になってくるというか。 そして、最初は突き放されたように感じた、それぞれの登場人物の生き様も、やがて、ままならない人生をただ生きるしかない人間を、そのまま受け止めようとする作者の愛情なのかな、と思えてきます。 個人的に特に好きだったのは、「列車」という一編。 ある帰還兵が、目的地に到着する間際の列車から飛びおりる場面からはじまり、めまぐるしく展開する日々の中で、徐々に過去の人生が明らかになる……という話なのですが、短編の中に、長編の人生が浮かび上がって、読書の醍醐味が味わえます。 例えていえば、カカオが濃厚でほろ苦いくらいで、ドライフルーツがぎっしり入っている、ずっしり重いチョコレートパウンドケーキのような本書。 できれば素敵な紅茶と一緒に、ほろ苦さと酸っぱさをかみしめて読みたい一冊だと思います。

Posted by ブクログ

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